私はヘアメイクアーティスト

kisato
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ウェディングドレスを着て椅子に座ってる女性にヘアーメイクをしている。頭の何倍もの大きさのまるでファッションショーに出るかのような奇抜で複雑な髪型。忙しそうで時間に追われている。そんな場面からしか覚えていない。

だいぶ前からいろんな事があってこの場面になってるのはなんとなく覚えてる。周りにも大勢の人が慌ただしく動いている様子で本当にショーの舞台裏だったのかもしれない。私はこの作業に集中していて工夫しながら手を動かしていた。あともう少しで仕上がりそうだというところで目が覚めた。

なんと奇妙な髪型と驚きながら眺めていて夢の中の私の中に入っていくような感覚になると同時に夢から覚めた。

誰かになりきるというか完全に誰かになってた。

こうした感覚はドラマや映画を観るときのものと違って登場人物そのものの内側から観ている。

やっとお団子できるくらいな私なのに夢の中の私はいったい誰なんだろう。

格好も雰囲気もたぶん顔もこの身体も今の自分と変わらない人物だった。夢の中では私だと思っているけど知らないことを知っていて別の世界に別の時間軸で生きている。そう、生きているという実感があった。

別の人物になっている夢はたびたび見たことはある。男性だったこともある。砂漠のような乾燥した暑い地域で横穴がたくさんあってそのひとつに入って何か絵のようなものを壁に描いている。

印象的なのはとても幸せで充実している気持ち。背の高い白人の男性の友人がお昼かなにかで迎えに来た。笑顔で挨拶してきて私は応えてそこから出ていく。いつもの事だった。とても仲が良い親友のような間柄。みんな白く長い布のようなものを巻きつけたような服装をしていた。私は背が低く浅黒く小柄な男性だった。今でもテレビで似たような景色が映ると同じ横穴だろうかとつい探してしまうほどリアルな夢だった。

まだ眠っている時のことは解明されていないらしいけど、人は寝ているとき脳内を整理するという。

誰かの体験が混ざり合うことってあるのだろうか。人類のアカシックレコードを読み取って時代を超えて。やっぱり頭の中の空想かな。頭の中で整理しながら空想もしているのかな。

その人になりきるというのはテレビや映画や現実で見聞きするものとは違って、文字の世界の方が近い気がする。

文章を読んだり文字を追う中で人物に声が入り景色が生まれ空気や音が感じられる。文字を読み取って想像を膨らませる。それが自分の体験として蓄積されるのかもしれない。

夢の中で別の人になるのはそんな想像上の人物に重なっていく感覚に近いのかもしれない。