SlidePackのこれまで

kitar
·

SlidePackのすべてのお客様が新バージョンに移行してくれたので、先月末をもって旧バージョンの稼働を停止した。2016年の夏からなので8年近く動き続けたことになる。

個人的に良い節目なので、これまでのことを簡単に振り返ってみたい。

生い立ち(2015年〜)

SlidePackの生い立ちを辿ると、元はポップインサイトの社内ツールとしてはじまった。

2015年頃に僕らはレポート作成を効率化する方法を模索していたのだが、既製ツールを使う方法やPDFで出力する方法など色々と試した結果、自分たちのニーズを満たすためには「自分が欲しいものを自分で作るしかない」という結論となり、パワポのレポートを自動出力するツールを作ったのだった。

汎用化したら便利そうな予感はあった。社長の池田くん(現Workstyle Evlolution CEO)は世の中のニーズと繋げる可能性にも気づいており、サービス化のアイデアを積極的に考えて後押ししてくれた。

作りたい気持ちはあったものの、色々事情があって(ポップインサイトはその後一時的に危機的な状況に陥る。また同時に、僕には子供が生まれる)手をつける余力がないままに時が過ぎていった。

サービス化(2016年〜)

転機が訪れたのは翌年2016年5月3日のことだった。僕はBFFのライアン(あるいは佐野くん)と表参道のブルーボトルコーヒーでしゃれ込んでいたのだが、いつものように他愛もない話をしながら、途中でパワポ自動化の話になった。すると、

  • 僕「これ汎用化したら便利だと思うんだけどねー(でも大変だし時間もないしごにょごにょ)」

  • ラ「ええやん、僕も手伝うからやろうぜ」

  • 僕「(なにこの人かっこいい…)」

という感じで、彼の協力によって一気に物事が進み始めた。

火が付いてからは早かった。数週間で実現の目処が立ち、その足で告知し、翌月には1社目の導入が決まり、さらに翌月にはクローズドβとして運用を開始した。

開始早々にお客さんがついてくれたことは極めて幸運なことだったと思う。僕のSNS投稿を見てくれていて、彼らの業務で活用する方法を見出し、社内説得してくれたおかげで、僕らは早期から運用経験を得て機能に活かすことができた。また、1社でもお客さんがいるということは、続けるモチベーションにも影響していたに違いない。当時導入してくれた方、例えばアルコさんやイングクラウドさんには、大変感謝している。

その後、機能や安定性の状況を見ながら、同年11月にオープンβとして公開し、翌年2017年3月に正式版として公開した。

ちなみに「SlidePack」というサービス名に決まったのは公開直前のことである。それまでは「pptx-generator」と名乗っていたような気がするが、ChatGPTもなかったので名付けには苦労した。

初期成長(2017年〜)

SlidePackのマーケティングはオーガニック検索が中心だった。時々SNS広告も配信したが、当時はパワポを自動化するツールが世の中になかったので、検索すれば上位にSlidePackのサイトが出てきた(その分自動化しようと発想する人も少なかったのだが)。また、既にニーズが明確化しているお客さんが検索経由で「少しずつ」やってきてくれるのもありがたかった。当時は今とは違ってすべてのお客さんごとに専用のモジュールを作っていたため、少しずつしか導入できなかった。

元々想定していたユースケースは広告運用などWebマーケティングのレポート作成で、はじめのうちは実際にそのような使われ方をすることが多かった。狙い通りと思っていたが、今振り返ると、Webマーケ業界には、そもそも感度が高く新しいツールを積極的に試す人が多かったのかもしれない。次第に自分では全く想像していなかったようなユースケースも増えていった。

技術的な側面では、初期はなんとVPS1台で運用していた。ほどなくしてAWSの基本的なロードバランス構成を取るようになり、現在はもう少しマイクロサービス寄りのアーキテクチャを採用している。

法人化(2018年〜)

SlidePackは元々個人事業として運営していたが、やがて「法人でないと取引口座を作れない」というケースも出てきたため途中で法人化した。そういう背景なので、Qitar LLCは元々何か明確なミッションのもと設立した会社ではないのだが、何か軸はあった方が良いと思い(ついでに僕はこういうことを考えるのが好きなので)会社としての考え方を文章化した。

API機能を中心としたフルリニューアル(2019年〜)

導入が増えていく中で、「自社システムと直接連携したい」というご相談を頂くことがあった。そこで試しにAPIを用意してみたのだが、するとまた1つ、また1つと似たようなご相談を頂くようになった。APIにニーズがあるなら、むしろAPIを中心に据えて、今やっていることはそれに被せる構成の方が良いな、と考えるようになった。

しかし当時のアーキテクチャでAPIを中心としたサービスに移行するのは無理があった。部分的に作り替えることも検討したが、最終的にはフルリニューアルすることに決めた。

フルリニューアルにあたりもう1人のBFFであるマルコ(あるいは前山くん)に助けを求めた。彼は同い年ではあるが、僕にとってはプログラミングの師匠的存在でもある。チャンスあらばSlidePackに誘いたいと思っており、フルリニューアルは絶好のタイミングだった。

技術検討も含めると1年くらいかけたと思う。二人とも他の仕事を兼務していたので仕事の隙間を縫って開発を進めていった。最終的にはサーバレスアーキテクチャを取ることになり、レンダリングエンジンはGoで主にマルコが書き上げ、API/Webアプリの方は主に僕がLaravelで書いた。余談だが、オープンソースで公開している kitar/laravel-dynamodb はこの時の副産物でもある。メインのサービスでは使っていないものの、一部の関連アプリで本番運用している。

2020年10月9日、API版としてリニューアルしたSlidePackを一般公開した。旧バージョンとは完全に異なるシステムだったので、4年近く並行運用していたことになる。

二次成長(2021年〜)

API版の方も幸運なことに、翌年2021年に入るとかなり大口でAPIを使って下さるお客さんが現れた。具体的には書けないが、この1社だけでも体制を維持できるレベルの契約をしてくれた。SlidePackの運営に欠かせないありがたいお客さんであるが、導入の背景を振り返ると旧バージョンを関連会社が導入してくれて成功した経緯があるので、実際には2年くらいかけて大口契約に至ったと考えることもできる。

また、API版ははじめから英語対応していたため、ごく少数であるが、海外企業が課金してくれるケースも出てきた。ちなみに利用規約などは日本語/英語ともにAZXさんに作って頂いた。いつもお世話になってます。

ここから2年くらいは大きな変化はなく、粛々と進めていたように思う。主には

  • レンダリングエンジンの保守・機能追加

  • API/Webアプリの保守・機能追加

  • 各顧客向けの開発や導入支援

  • 旧バージョンのお客さんの新バージョン移行

といったあたりだ。すでに成熟したフォーマットであるpptxを扱っていながらも、意外とやることは尽きない。

ノーコード機能と海外展開(2023年〜)

2023年になると、完全にノーコードで利用できる機能(プログラミング不要でExcelを元にパワポを生成する機能)を追加した。元々似たような機能が旧バージョンにあったのだが、一部のお客さんからの根強いニーズがあったため、新バージョンの方でも改めて開発することにした。

ノーコード機能が加わると、完全にセルフサービスで使ってもらえる幅も広がる。そこでそろそろ英語圏に露出しても良いと考え、Product HuntやHacker Newsなどへの投稿を行った。残念ながら上位にHuntされるほどの注目は集めなかったが、これがきっかけでNASDAQ上場企業が導入してくれたりもして、手応えは感じている。

そしてもちろんAI活用の可能性もある。僕らはSlidePackとは別にAIを活用したアプリも沢山作っており、いつも「SlidePackではどう活用すると便利かな」と考えている。

おわりに

かなり端折って書いたつもりだが結局長くなってしまった。

導入時の苦労とか、買収の打診とか、書かなかったことも色々あるんです。もし聞いてくれる人がいたら是非お声がけください🙇‍♂️

@kitar
キタールです。