やる気は取り掛かってから出てくるものであり、やる気が出ないと物事に取り組めないというのは間違いであり、やる気が出ないからやる気がないというのはただの言い訳でしかない。
今日の昼にインターネットの海で見かけた言葉である。初めてこの言葉を知ったのはずいぶん前だが、私は何度も何度もこの言葉に直面している。何故なら何度も何度も「やる気 出し方」と検索をしているからだ。
私のような怠惰な人間は、正確には、怠惰である私は「正論を言われたところでその通りに動けるわけではない」「正論ハラスメント」「出た出た」と思う。性悪である。そのうえ実際に行動に移せない。移そうと思ってもすぐに匙を投げる。怠惰である。今日も「一瞬でやる気が出て生活が豊かになる魔法の言葉」には出会えず、すぐにchromeをタスキルした。
私が物事に取り掛かるのは決まって「やらなくてはならないから(そうしないと不安だから)」もしくは「やりたいから(たとえそれが何となくであっても)」の二択であり、正論が心を突き動かすことはなかった。
「やりたいから」は、思い付きと呼ぶにはあまりにも突飛な衝動で決まることもある。その気まぐれな悪魔は多いとシーズンに一度、少ないと半年以上も鳴りを潜めた。前回は一年ほど前の秋。隣人の騒音によるストレスで気が狂いそうになっていた私は衝動的に部屋の模様替えを行った。三日ほどは気に入っていたが、すぐに「Ctrl+Zしたいな」と思った。
その悪魔が今日の昼、一年ぶりに姿を現した。SNS断ちをしよう。chromeをタスキルした直後にそう思った。
今年の目標はかねてより構想していた創作小説の一章完成である。設定やストーリーはもう十年ほど前から考えていて、実際に何度か執筆したこともある。しかしいずれも全没になった。納得がいかなかった。当時は熱中していたものもあり、創作の優先順位がかなり低かったせいで、完成まで漕ぎ着けないまま没にしたものもたくさんあった。
今はもう熱中している趣味はない。二次創作は恐ろしいので足を洗った。でも文章を書くのは好きだった。そんな私に残されたのがこの小説だった。
他のことに熱中している間、時おり小説やイラストを外注することがあった。金を払えばタダで自分の好きな要素が詰め込まれた小説やキャラクターを見れる。最高だった。ただ強いて言うのであれば、自己解釈を完璧に百パーセント落とし込めるのは他ならぬ自分のみである。もちろん外注した方々に不満は一切ない。音信不通で納期を無断ブッチし今の今まで謝罪の一言もなくのうのうと活動しているクリエイターは未だに大嫌いだが、その他のほとんどの方は親切で温かい対応をしてくださりました。ありがとうございました。またお願いいたします。
そうして自分のためにちゃんと書こう、と奮起した私は、2023年の間に設定からプロットから何からを一から精査した。外注して粗を指摘してもらい設定資料をブラッシュアップすることまでした。しかし本文の完成には至らなかった。
SNSのせいに違いないと思った。
「目に悪い」「腰に悪い」「喉に悪い」と同じように、SNSは「頭(脳)に悪い」と常々思っていた。上っ面のたった数百文字にも満たない文章で何かを知った気になり、コミュニケーションを取った気になり、人間関係が広がった気になる。一日のうち数分、数十分なら娯楽としても理解できるが、私は自由時間のうち約七割をこれに当てていた。あたまわるっ。
分かった上でSNSの超重度中毒者(もしくは廃人)だったのは、その「気になる」のが楽しかったからだ。もともと色々な人の色んな考えを見るのが好きでブログや質問サイトを巡回するのが好き。チャットサイトに入り浸っていたこともあった。私の中で、それらの完全集合体が「Twitter(現X *1)」だった。
*1 Twitterを今すぐ返せ
Twitterはよくない。楽しすぎる。薬物中毒者に乗っ取られてから「おすすめタブ固定」という超不評機能が追加されたが、私にはこれが本当に良くなかった。楽しすぎた。何もしなくとも愉快なツイート群、しかも知らないアカウントの呟きが波のように押し寄せてくる。しかも無限に。気付けば三十分経っていた、というのはザラにある。
Youtubeショートも同じである。映画をたった一本観るのは非常に腰が重く、まるで眼前にそびえ立った壁を全裸でよじ登るような困難さを感じるのに、Youtubeショートで数十分費やしていることはザラにある。
しかしどちらも共通して「明日から役に立つ知識」「知って良かった情報」というのはほんの一握りである。もしかしたら私が認識している以上に「タメになる知識」というのはあったのかもしれない。しかし怠惰である私には「正論を言われたところでその通りに動けるわけではない」「正論ハラスメント」「出た出た」と思うのが関の山なので、きっと存在すらなかったことにしているのだ。いますべてを忘れているのが何よりの証拠である。
創作小説を完成させたい。でもSNSが楽しい。SNSのせいで時間がない。創作に対するやる気が出ない。よし、SNSを辞めよう!
SNSを辞めたらきっと素敵で美しい豊かな生活が送れて、毎日何千字も文章を書くことが出来て、今年の目標は達成して、宝くじ一等に当選し、友達も百人出来て、この世のすべてを掌握できる!
なので私はSNSを断ちます。具体的にはTwitterとYoutubeショートを断ちます。その他のSNSにはそこまでのめり込んでいないからです。
「こんな日記を書いている時間があるなら創作に取り組めば?」
はい、出た出た。