0214/あかつぐサキュバス

kkkyyy9610
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「なあ、これほんとにあってる?」

 ポッキーの先を咥えながら、目の前の男が言った。咥えたままだから話しにくいのか、ちょっとだけ舌っ足らずな言葉を発しながら、金色の瞳で見上げてくる。

「合ってる合ってる。んじゃ、先に折った方が負けな」

「んー、」

 世間知らずな(?)サキュバスは、俺の言葉に疑問符を浮かべつつも、こくりと頷いて目を閉じた。尖らせた口元には、青いチョコレートがコーティングされたポッキーの先があった。

 ーーーー今日は、恋人同士でチョコを食う日。

 そう、俺がつぐみに伝えたのは朝の事。つぐみの寝癖を整えてる時だ。

「チョコ? なんで?」

「バレンタインだから」

「ばれんたいん」

 バレンタインはサキュバスの世界には無いらしい。平仮名言葉で繰り返すつぐみに笑って、額に唇を落としてソファの上に誘った。そこで取りだしたのが、つぐみが今咥えている青いポッキーだ。

「二人で端から咥えて、途中で折れなかったら成功」

 そう言って反対側を咥えた俺を見て、つぐみがキラキラした顔で頷いた。恋人は疑うことをしらない眼差しで素直に反対側を咥える。

「ん、」

 カリカリと、つぐみがポッキーを齧りながら唇を近づけてくる。ああ、本当に、俺の恋人は世界一かわいい。

 咥えたまま静かに笑って、俺も少しづつ齧り始める。

 次第に齧る音は消えて、つぐみが目を開けたのとーーーー俺達の唇が触れたのは、同時だった。

 戸惑う金色の瞳が、俺を映して揺れる。何か言いたそうに開いた唇を、思い切りキスで塞いで、舌を絡めた。

「〜〜〜っ!?!?!?」

 ぽかぽかと背中を叩くつぐみに、また笑みが零れる。次第にキスは深くなって、いつの間にかチョコレートの味はすっかり消えてなくなった。それでも唇を離すのは惜しくて、散々口内を愛撫すると、つぐみの身体から力が抜けて、俺に縋り付き始める。

 ああ、もう、本当に。

 俺の恋人は世界で一番可愛くて、愛しい。(終)

@kkkyyy9610
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