良かったら一緒に風呂に入らないか。と誘われた。俺が断らないと知ってる嬉しそうな顔で、ひときわ爽やかな声で。
一緒に風呂に入る時の黒乃さんは、困るくらいえっちで、見惚れるほどセクシーだ。
固い胸板に背中を預けると、湯船の中で抱きしめられた。ちゃぷりと湯が波を立て、溢れ流れ出た。
「……、」
青い入浴剤が溶けだした湯の中で、黒乃さんの手が俺の肌に伸びる。薄い腹を撫でながら、下の方へとずれていく。指の動きは明確な触れ合いを意味していた。性欲なんて微塵もなさそうに見える黒乃さんが、こうして人並みに欲を表してくれるのは、素直に嬉しい。
「ん……っ、」
風呂場に、俺の声が反響して響く。その声を聞いた黒乃さんがふふと静かに笑って、俺の項に口付けた。
ちゅ、ちゅ、と甘いリップ音がする。舌が伸びて、肌を熱く焦がす。
「は……っ、ぁ……っつ」
「……叶希くん……」
ちゃぷちゃぷとお湯が波たって湯船から溢れていく。それと同じ速度で、俺たちのからだが重なっていく。愛が何重にも重なって、俺の心と身体をトロトロにとかしていく。
風呂から上がったら俺はバターみたいに溶けてるんじゃないか。思考が桃色になっていく最中、ふと思う。そして、もし溶けてしまったら、黒乃さんに全部食べ尽くして欲しいなとも。(終)