0302/あかまし

kkkyyy9610
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「茜さ、ラブソングに飽きたら何歌う?」

日暮茜はそう問いかけてきた冬木真白の顔を見た。前々から突拍子もない事を言う男だと思ってはいたが、今日の発言は今までで過去一だと思った。

「何だいきなり」

「んー、だって、」

訝しげに目を細め真白を見ると、男は指先に挟んだ煙草をふかしながら、カラリと笑った。

「お前のラブソング、聴いてっと照れるから。だからさっさと飽きて欲しいなぁって思っただけ」

煙を吐き出し、再び煙草を咥えた真白はくぐもった声で言って、肩肘を窓の手すりに乗せ頬杖をついた。その言葉にーーーーなるほど、と納得の言った茜がふはっと吹き出して笑う。

頬杖をつく真白の隣に近づいて並び口を開く。

「お前、相当浮かれてんだな」

「......うっさいよ」

「そりゃ、自分宛のラブソングが全世界で発信されてたら照れるよな」

「......」

図星を刺された顔つきで、真白が茜をじろりと横目で睨む。その視線にまた笑って、

「残念ながら、お前がいる限りラブソングに飽きる事はねーわ。大人しく諦めな」

「......」

と吐き出しながら、真白の口元にある煙草を奪った。

自分の口に挟んで吸い込むと、独特の味が肺に染み込んでくる。

茜の言葉と行動を身動きひとつせず横目で見ていた真白は、煙草を吹かす恋人の姿を見つめてから「......ほんっと、王様はずっるい」と悔しそうに呟いた。(終)

@kkkyyy9610
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