くろとき/あたたかいひと

kkkyyy9610
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 朝の海は、潮の香りと夜明けの香りが混ざって、なんとも神々しい。神秘的で、でもどこか懐かしい香りが鼻を擽る。

「さっむ」

「ストール巻くか?」

「んー……や、大丈夫です」

 助手席をおりた叶希が身体を刺すような冷たい風に縮こまると、運転席から降りた黒乃が声をかけてきた。手元には、NYで買った厚手のストール(ブランケットと言った方が正しいかもしれない)が握られている。

 ううん、と悩ませてから叶希は首を振った。それを見た黒乃が「わかった」と、脇にストールを抱えたままこちらにやってくる。

「……君は、本当にわかりやすいな」

「……む、」

 目の前に立つ黒乃がクスクスと笑って、手を伸ばしてきた。告げられた言葉に、バレてると思いつつ、手を取って、指を絡めた。

「ストールがあっても無くても、手は繋ぐから安心してくれでいいのに」

「……っ、……はい……」

 ぎゅっと指を絡めて、繋いで、海岸に続く道を歩く。朝日が、自分たちを照らす。

 浜辺に伸びた自分たちの影が、ピットりと寄り添いあっている。

 瞳に移るその光景が嬉しくて、手に触れている温もりが甘くて、叶希は今度は別の意味で身体をぶるりと震わせて、「……黒乃さん、あったけ……」と呟いた。

@kkkyyy9610
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