元々地元のWebサイトの制作会社に勤めていた。割と年を取ってからWeb技術についてきちんとインプットしたんだけど、その会社に入ったらすでに自分より年下の人達がバリバリと経験を積んでいるのを目の当たりにした。「人一倍頑張らなきゃ。」強くそう思った当時の自分は、業務時間外でも技術的なインプットをするように心がけたし、週末の勉強会とかセミナーにも足繁く通うことにした。もっとも、毎週のようにそんな機会は発生せず、どちらかと言うと月に1回位の小イベントに参加する感覚だった。とても楽しかった。時には隣県のセミナーにも足を運んだりした。小旅行のついでの感覚。
元々インターネットというか、Webやブログ、SNSが大好きな自分としては、この世界に技術的な面でアプローチできるようになって嬉しかった。技術を身につける以前は、Web上でみんながどんなコミュニケーションをしているのかを知るのが好きだったけれど、これがどのような手段で実現されているのかという土台の方に興味を移すようになった。
しかし、色々あって地元に息苦しさや疲れを覚えていたので、新しい環境に移り住むことにした。そこで、人のつてを借りて関東で色々やってみることにした。地元でいろんな人と関わるようにしていたので、その繋がりを少し活用した結果だった。心身共に疲れていた状態だったけれど、ここで少し羽根を伸ばすことができたのは大きかった。
この決断で色々なものを地元に置き去りにする必要があったけど、それでも背中を押してくれたのはWeb上で知り合ったとあるエンジニアからの言葉だった。「東京に出て頑張るべきだ。」その言葉を受け入れて、一旦関東に足を踏み入れることに決めた。
関東のとある会社で働くようになった。技術面でのスキルを一応買われてはいたが、仕事内容的にやや物足りない状況だった。とは言え同僚や環境には恵まれていたので、大変居心地は良かった。技術者はほぼ自分だけだったので、自力で色々頑張る必要はあったが、一応はなんとかなった。
関東に来たので、都内の勉強会やセミナーに足を運びやすくなった。しかし、専門的できらびやかな人達が集まる空間に参加すると劣等感に襲われることもあった。ろくすっぽ経験を積んでいない自分がこんなところにいていいんだろうか。「でもやってくしかない」そう言い聞かせていることも多かった。
そんな中、COVID-19がやってきた。外出自粛を求められ、当然ながら誰か似合う機会がガツンと減った。家にいながら、色々手を動かすしか技術を身に着けられない。なので、やる気が湧かない割に手を動かしたりインプットをしていた。もっとも使える時間が急に増えただけでだらだらしている事の方が多かったが。
この時点で、関東ないし東京に来た前向きな理由はかなり薄まっていた。誰かに会えるわけでもない。新しい場所に行けるわけでもない。新しい知識や経験を共有してくれる人と同じ空間を共有できるわけでもない。元々インドアな性格だから家にいるのは良かったけれど、それでも退屈だった。時間が無為に過ぎた。
程なくして社会が少し回復して、日常が少しづつ戻ってきた。目に見えないものに怯えつつ、マスクを付けてワクチンを接種して自衛する日々。そんな中、行きたいセミナーや勉強会はオンラインで行われるようになった。これもこれで悪くはなかったけれど、東京に来た理由は回復しなかった。
アフターコロナと持て囃され始めた頃に、会社を辞めて転職をすることにした。失業保険を貰いながら羽根を伸ばすという選択肢もあったが、「ろくすっぽ経験を積んでいない自分」という劣等感をなんとかしたい気持ちの方が強かった。運良く、すぐに転職先が見つかった。そしてついでに引っ越しもした。
転職先では今までの遅れを取り戻すように色々と頑張ることになった。もちろん転職直後は「人一倍頑張らなきゃ。」と思っていたが、ほどなくしてそれは大分軽減されたと思えるようになった。
転職・引っ越しをした頃から、セミナーや勉強会もオフラインで活動がされるようになってきた。仕事が忙しくない・支障をきたさない範囲で、オフラインイベントにも参加するようになった。相変わらず劣等感は顔を覗かせているが、当初の程ではなくなった。割と対等に参加できている。そう感じた。
東京に来た理由の1つは、このような技術者のコミュニティにオフラインで参加したいからだった。Web技術に明るい人達に囲まれながら、純粋に技術の話が共有される空間が好きだから。東京である必要はなかったかもしれないけど、でも一番手っ取り早く・取っつきやすい場所は東京だった。