仕事柄、紙の本の価値とは何か、みたいなことを考えることがある。実用書、例えば新NISAについて知りたい、と思った人が本を買うのはなぜか。おそらく「よくわからないから」「とりあえず本一冊買えば何とかなるだろう」という期待がそこにある。本のジャンルにもよるが、割とあるパターンだろう。
けれどここには矛盾がある。その人は、自分の知りたいことがその本の中に網羅されてるかどうかは原理的に知りえない。1. 本を読まないと確認できない 2. 自分が知りたいことを網羅的に知っているならば、すでにその分野に知識があるわけで、本を買う必要がない。
にもかかわらず「とりあえず」で本を買う人はいる。本当にその人の知りたいことがその本にすべて書かれているからではない。本という形で「綴じられている / 閉じられている」からこそ、「そこに知りたいことが網羅されているのでは」と期待するのである。本の中身が先にあるのではなく、本という物理的にパッケージされた形式がまず価値をもたらす。
とこんなこと書くと編集者の方には怒られそうだが、これだけスマホが広がりいくらでも情報の取得の仕方はバリエーションがある中で、縮小しているとはいえいまだに紙の本が生き残ってるのは、そういう面もあると思っている。