(5/8追記)『Fate/EXTRA』雑感

見代
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公開:2025/5/8

私の中でFateシリーズは不思議な位置づけで、人に勧められて触ってみるも3回ほど挫折してGOでやっと縁が結ばれ他のシリーズにも手を出すようになり、それでも常にnot for meという気持ちを抱えたまま、なぜか好き好んで触り続けているという、そんなシリーズです。

not for meながらGOでのEXTRA関連のストーリーやキャラはいつもなんとなく好きで、いつか原作に触れてみようとは思いつつゲームへの意欲が減退してるし人から「じゃんけん運だけのクソゲーw」と聞いていたので手をこまねいて早数年経ちましたが、別ジャンルで血風呂ネタを見かけてつい爆笑してしまい、本家とおぼしきエリザベート・バートリに会うためにCCC、の前にEXTRAやるかー。とやっと重い腰を上げられました。

周回次第追記します。


■ 1周目:女・弓・凛(2025.04.12)

まず戦闘システムが聞いていた評判と違って面白かったです。戦って経験を積んで相手の手の内を知って予測して対応するとかコマンドバトルなのにアクションゲームみたいな感覚になったの驚いた。たしかに運要素もあるけど情報の蓄積で確率に落とし込めるし「万一」に備える判断で危機を回避することもできるの巧い。

そしてこの戦闘システムが「魔術師としては無能でも戦術を見極め指示できる勘の良さのお陰で何とか勝ちの目を得られてる」という主人公の特性をプレイヤーに否応なく体感させてくれるのがとても良かった。こういう制作側のやりたいことが直球で伝わってくるシステム作り=世界観構築は大好きです。メモor攻略情報必携のゲームなので携帯ゲーム機の「いつでもどこでも手軽にプレイできる」という利便性が活かしにくいところは難点と感じましたが。

グラフィックはまぁ15年前の携帯ゲーム機だしな……と思いつつ、女キャラの顔とか動きのかわいさには執念のようなものを感じられて良かった。音楽はあまり印象に残らなかった。ごめん。

ストーリーは……うーん相変わらず楽しいけど同時にとことんnot for meな印象。そういう先入観があるからか入り込めず、すべてが上滑って見えてしまって心に響かないという。作中で「相手の人生はそいつだけが負えるもので“わかる”なんて思うのは傲慢」という台詞もあったし、もしかしたら制作側が突き放したような描写を徹底してて入り込めないようにしてるのかもしれない。その割には皆くどくど話すし僅かな視線ひとつで内面を深く理解してる描写が多いんだよなぁ……。

それでもありすちゃん陣営とランルーくん陣営は好みだったし、ユリウスの抱えるものは好きでした。あと全体的な設計が、猶予期間6日+決戦日をひたすら繰り返すというルーチンワークなのに毎回全然違うことが起きて「繰り返し」という印象がほぼなかったのが本当にすごかった。

で。大元がエロゲなら異性愛ものでもあるじゃんという予断と、自分が2次元では異性カップル妄想をするのが好きなのと、最近は特定会社の乙女ゲーばかりやってたのとで、主人公の性別を選べるEXTRAはどういう感覚になるかがプレイする楽しみのひとつでもあったんですが。

主人公の性別を女にしても女キャラからのアプローチがすごくてワア……てなる感じはGOと同じで、でもちょっと距離感が近かったり嫉妬で拗ねられたりスキンシップが多かったり頬を染められることがあったりするだけで同性同士の友情の範囲に落とし込めないこともない絶妙なさじ加減だったなぁという印象。

あと女主人公と弓で恋愛感情妄想は私にはハードル高くて降参したくなる感じもGOと同じでした。主人公の内面がそれどころじゃないし、凛(略) けどお陰で信頼関係……作中の言葉を借りるなら「絆」の発展に集中しやすかったのは気持ち良かったな~。と女主人公側の気持ちはあっさりめに解釈して関係性もそういうものと落とし込んでも男(弓)側はこっそりひっそり激重感情を持ってる可能性もある(という解釈の余地もある)から怖いよFateは。

GOと同じなら女サーヴァントからのアプローチは凄そうで、あのノリで百合を見たい感覚はたぶん持ってないので、残り2周は男主人公でプレイすると思います。

■ 2周目:男・剣・ラニ(2025.05.08)

一番驚いたのは主人公は台詞らしい台詞が一切ないのに(ほぼすべて共通する一人称視点の地の文として展開)性別でこうも印象が変わるものなのかということです。自分のプレイスタイルや選択したサーヴァント、ルートの影響もあるとは自覚していますが、1周目の女主人公はいちいち校舎全体を廻って人と話すくらいには能動的で社交的、ついでに芯は強くて頭も切れる子として見ていましたが、2周目の男は必要最低限の行動しかしないけど(そういう意味では要領とカンが良い)向こうから人が寄ってきてそれを全部受け入れるような受動性を示し、内面も空虚かもしれないけどそこを清らで温かなもので満たそうとするふわふわ癒し系というふうに見えました。

ふと気になってGOのそれぞれのプロフィール文を見たら似たようなことが書いてあったのがまた興味深い。ニュートラル(中性的)に描くと男キャラは女性性が、女キャラは男性性が際立つということで、制作者もそのことに自覚的なのかも。

ラニとは立ち位置が違うというかよくわからないふしぎな子という印象から内面に似たような境遇を抱える同志として少しずつ関係を深めていくのが見ていて微笑ましくて、男主人公とラニのカップリングはありだなと久しぶりにオタク感性が刺激されました。最後にラニがどう判断して行動するかが描かれなかったのも絶妙で良い。

剣が生前得られなかったものを当たり前のように与えてくれる主人公に懐くのも「恋路」にまで発展する必要があったかは首を傾げるものの肯けはしました。サーヴァントという特殊かつ唯一無二の立ち位置だからか主人公のラニとの関係と矛盾や衝突を覚えず受け入れられたのはなかなか面白い経験。二股等を推奨しているわけではない。圧が思っていたより強くなかったのがまた良かったのかも。

ストーリー的にもレオの外見が剣の対になっていることは1周目で感じていましたがいざ剣を従えて対峙してみると際立ちますね。それでいて剣の衣装の真紅に対してレオのそれは淡く、王としては未熟というのが視覚的に伝わりました。男主人公と剣の旅路は“正史”っぽさがある。

性能面は、先に弓でプレイしていたからこそ剣の強さが実感できてすごく楽しかったです。これだけ強いのに殺との対戦前に行動不能になったときの性能ガタ落ちっぷりが弓よりよほどすごくてめちゃくちゃ驚いた。剣がここまで弱体化する攻撃を食らってもそこまで見劣りしない戦闘をしやがった弓に。

そう、弓。素直な剣という比較材料を得たことで改めて1周目を振り返ると、剣が「恋路」「想い人」と称したに相当する激重感情を本当に抱きながらしれっとしていた可能性が浮上し。そのくせ終結直前に剣が延々と想いを吐露していたところを無言で通したお前何。言外どころか何もないところに感情を込めるの好きなので困る。そのくせ元カノ(略)

かつて『Fate/EXTRA』を勧められたのは女主人公の恋愛要素ありゲー(乙女ゲー含む)をそれなりに嗜んで来た者としてどう見えるか気になられたという記憶があるようなないような気がします。Fateシリーズの女キャラは私が想定できる範囲よりタフなのでどうしても解釈違いにはなるし、CCC以降の続編で明確に描かれてるだろうからいま私が云々しても意味がないとは思うのですが、一応述べるとうちの女主人公は自我と共になんとはなしの恋心のようなものが芽生え始めて自覚した途端魔力供給問題で頭から冷水を浴びせられた思いで「まぁ凛なら仕方ない私も凛は好きだ勝ち目もないというかマスターとサーヴァントの関係だと同じ土俵にも立てず勝負にもならない、というか右も左もわからない中で頼ってきたのをいつからか勘違いしちゃったな」と割り切って信頼関係だけを大切にする方向にシフトしたことを想定していたので上記の場合女主人公は弓のみぞおちに強近接攻撃を決めてよいものとする(※『Mass Effect』)(古い)

選択できるルートに男キャラも欲しかったです。けど元が男性向けシリーズだし的外れか。

@kmgtr
心に移りゆくよしなし事をそこはかとなく書きつくればあやしうこそものぐるほしけれ