声優とキャラデザが豪華すぎて意味がわからない上にキャラも話もシステムも良いという、謎に無敵な乙女ゲーでした。いつも通りTAKUYO産。
という話を中心に、いつもよりちょっと頑張って書いていきます。なんか「お前の本気を見せてみろ」と言われた気がするので……(※言われてない)。
公式サイト→怪盗アプリコット ポータブル
ちなみにこのゲーム、Windows、PS1、DC、PS2、PSPで出てますが、遊ぶなら要素が一番充実してるPSPがおすすめです。
■ ゲーム概要の紹介
・ストーリー
家業である女怪盗になりたい一心で10年間過酷な特訓を受けてきた主人公・望月あんず(名前変更可、ボイス付き、顔出し固定)。17歳の誕生日を迎えて晴れの正式デビュー! をする前に、先代である母にひとつの試験を出されます。
選ばれし5人の男のうち誰か1人のハートを盗め。
あんずは戸惑うものの夢を叶えるため、昼は女子高生として、夜は怪盗としてターゲットに接触して目的を果たそうとします。けどその活動の中で、闇の組織の陰謀が見え隠れしてきて……
というのが大まかなストーリーです。攻略対象は上記5人+5人に加えて友情(?)EDのみのサブキャラが2人の総勢12人。
・CV
敬称略とカテゴリ別50音順でいきますが主人公が夏樹リオ、攻略対象は石田彰、井上和彦、櫻井孝宏、関智一、三木眞一郎の5人+伊藤健太郎、小西克幸、笹島かほる、結城比呂(現・優希比呂)、さらにサブキャラに松本保典ときた。大河ドラマか?と言いたくなるほど豪華。これで全キャラフルボイスなのでひたすらに耳への暴力をお楽しみいただけますが、キャラ別にボイスのオン/オフも自由に設定できる親切設計です。
・キャラデザ
キャラデザと原画はたかなぎ優名さん。乙女ゲー界隈としては『十鬼の絆』のコミカライズやってた人と言うと伝わるでしょうか。私としては『FEトラキア776』と『式神の城』のコミカライズを手掛けた人です。
・システム
女子高生・望月あんずとしては朝・昼・夕の3回、女怪盗(見習い)アプリコットとしては夜の1回、計4回会う相手を選んでいくのが基本システムです。時々出る選択肢で好感度と怪盗度が増減。好感度を上げてイベントをこなせば目当てのキャラのルートに入り、怪盗度によって大まかに2種類のEDに分岐します。
母、教師、親友に会うとそれぞれ異なるミニゲームができて、クリアすると怪盗度が上昇します。会うだけ会ってミニゲームはやらなくても問題なくどのキャラも攻略できます。なので周回プレイが結構快適。体感としては12人という大所帯でも難なくクリアできました。
■ 全体的に感想
さてここからネタバレを含むのでご注意。
・ストーリー
初の仕事が「男のハートを盗むこと♡」「怪盗になるなら女も磨かないとね♡」と言われた瞬間「なんだこの恋愛脳……大丈夫かなこのゲーム……」と一気に目が据わったんですが、話を進めるにつれ悪の組織の陰謀を阻止する目的もちゃんとあると分かって燃えるし、それ以上に怪盗としての特訓も試験も5人の選考理由も娘の幸福を願う親の愛でしかないことが分かったときは「いつものTAKUYOじゃん!!」と天を仰いだ。これならそりゃ夜間ひとりで男の部屋に上がり込んでも事故らない。(一方で危険性がちゃんと言及されているのも良かったです。)試験に合格することが必ずしも正解じゃないところには感心して唸りました。
TAKUYO、すっかり闇のメーカーと呼ばれてるみたいだし正直私もそちらの印象の方が強いんですけど(なにせ初めて遊んだTAKUYOゲーが『死神と少女』、『月影の鎖』、『スイクラ』の3コンボ)、常に根底には愛と応援があるんですよね。『怪盗アプリコット』はTAKUYO初の乙女ゲーだったようで、TAKUYO第1作目の『エチュード』でも思いましたけど、ここのメーカーは初手からずっと軸がブレないのでどのゲームも安心して楽しめるの、すごい魅力だと思います。お陰でずっとついていけます、ありがたい。
主人公の家族が見せる絶対的な愛って現実にはなかなか無いと思うんですが、バーチャルでもこうやって体感させてもらえると現実で何かあった/されたときに判断材料のひとつになるし、それはプレイヤーの人生を変え得る「経験値」にも間違いなくなるんですよね。なんとなくTAKUYOってそういうところまで考えてゲームを作ってる印象がある。主人公を取り巻く世界があまりに陽属性なので余計にそんなことを噛み締めました。でも発売当時の私は闇に飢えていたのでこの光は手に取れなかったと確信できるのもなかなかに感慨深い。その辺を考えると闇から入らせる最近の(?)スタンスの方がTAKUYOの持ち味である光を届けやすいのかもしれない、ド闇ゲームで光を掴んで世界が変わってしまった私は猛烈にそう思う。心はいつまでも闇属性ですが、まぁそれは良い。
もうひとつ『怪盗アプリコット』のストーリーで好きなところは、それぞれのキャラが「生きてる」感じの強いところです。主人公の存在に関係なくそれぞれに生活があって、生きる場所があって、夢や目的や悩みがあって、人間関係がある。そうしたバラバラの点と点との繋がりが話に奥行きを増しているのが面白かったし(お目当て以外のキャラのイベントもこなさないとルート入れないところにもその空気が出ていました)、乙女ゲーよりは漫画やアニメを味わってるような感覚にもなりました。OPもそういう風情があったし(あれ音楽も映像も大好き)、『ひめひび』がモロに少女漫画を意識してる要素が散見されたことを考えると本作もそういうのを念頭に置いてたのかもしれない。
言うなれば濃い。選ばれた5人が濃いのは言わずもがな、サブキャラに当たるだろう5人はイベント数こそ少なめなものの主人公との運命性が強くてどの話も濃かった。選ばれず生活圏も若干重ならないから会う機会が少ないだけ、けどそんなふうに縁が薄くてもこの人が良いと選べた相手が「サブキャラ」なわけない、そんな感じ。そしてそりゃそうだ。
TAKUYOがゲームにプレイヤーへの愛と応援を込めているとしたら、これ「誰もが“主人公”で“選ばれし者”なんだよ」っていうエールとも解せて、TAKUYO優しい泣いてしまう。妄想解釈で泣けるのはオタクの醍醐味です。
・システム
乙女ゲーはどうしても話とキャラの比重が大きくなるので他の要素が目立たなくなりがちなんですが、物心ついた時から色々なゲームをやってきた身としてはシステムやゲーム性を重視してまして、TAKUYOはその辺りも抜かりなく作ってくれるところも大好きです。
で、今作で絶賛したいのは! 朝昼夕夜に会う相手を選ぶ画面でのカーソルの初期位置と操作設定です! これほんっとすごいんですよ!
まず初期位置なんですが、狙ってるキャラに合ってることが多いんですよ。たぶんメインキャラは優先度を上げてるかミニゲームは優先度を下げてあって、その上で会話イベントの進行順でソートがかかってる感じがする。お陰で選択画面が表示されたらそのまま◯ボタンを押せばいいことだらけで楽でした。
そして操作設定。キャラを選ぶのは左右、スキップするかどうかは上下で厳密に分かれていて大はしゃぎしました。つまり、初期位置がどこであれ! 誰を選んでいようと! スキップしたいときはボタン1回押すだけ! 「やっぱ会話見るか」となったときもボタン1回で元に戻れる!
このふたつ、地味ではあるけど塵も積もれば超! 快! 適! なんですよ!! 周回プレイが捗ったと先述しましたが、この恩恵がすっごい大きかったです。いやはや素晴らしい。末代まで語り継ぎたいユーザビリティの高さです。
・ミニゲーム
攻略に必須じゃないからとスルーされそうなミニゲームですが、ちょっとこれについては言いたいことがある。
3つともなんでファミコン時代の鬼難易度なんですか?
乙女ゲーのユーザーの中には「他のジャンルのゲーム一切できません」「何をどう操作したらいいか分からない」っていう人も少なくないのに、いくら攻略自体に不要とはいえこんな難しいミニゲームが入ってるだけで怯んで撤退します。いらんところでファンを減らす危険性を増やすんじゃない。
というのが一般論で私個人の意見としては、ありがとうございます大好物です!!(満面の笑み) とは言えまだどれもまともにクリアできていない。こ、攻略に不要だったから……!
単にファミコン時代からのゲーム好きだからテンション上がるというのもあるんですけど、主人公の特訓がどれだけ過酷なものかを体感させてくれるのがすごい嬉しかったんですよ。これぞゲームの醍醐味。漫画やアニメや映画では味わえない経験。システムやゲーム要素で物語ってくるゲーム大好き。
まぁでも本当に難しいんですよ。神経衰弱は対戦で不確定要素が多く、必ず勝つことが難しい。しかも母、結構強い。油断すると一気に持ってかれる。さすが先代。松本声の教師が担当するあんず拾いゲームは単調だし楽勝かと思いきや、僅かでも十字キー(パッド)操作を誤ると間に合わないことがかなりあるし、一発ゲームオーバー。ファミコンか?(2回目)
一番頭がおかしい(※大賛辞)のが放送部ゲームです。上に表示された文章を下のキーボードで入力するだけの簡単なお仕事のはずなのに、キーボードの配列が毎回ランダム。なんで毎回?! 普通のキーボードとは配置が違うのは良いとしてもそこは固定しようよ!? お陰で覚えるという対策がまったくできません。なぜこんな鬼仕様にした。途中入る親友の応援も気が散る罠。
しかもお題の文が何回かに分かれて表示されるんですけどこれがすっっっっっっっっっっごい曲者で。笑わせてくるんですよ……「どうしてそうなった?!」て驚くし、先が気になってハラハラするし、キーボード打つどころじゃなくなって何度失敗したことか。
「ぼくのパパは」シリーズが特にやばかった。何だよ「ぼくのパパはパイロット。パパはちがうって言ってたけどぼく知ってるもん。だってパパ、「香港に高飛びでもするか」って言ってたんだから!」て。(※うろ覚え)
パパ何者だよ。正直ストーリーが霞むくらいの衝撃でしたありがとうございます。いやそれだめでは。「原稿の内容に惑わされずいかなる時も至って冷静に読み上げるのがアナウンスの技術」そうだね!! 良い勉強になりました!!
・キャラデザと原画
たかなぎ優名さんの絵、当時よく見かけては「絵は好きだけどゲームやってないのにコミカライズ読んでもなぁ……」と素通りしてきた人なので、ここでやっと接点が持てて嬉しかったです。良い人を連れてこられる。
黒目がちの瞳がかわいいんですよね。そのせいかPSPの小さい画面だと表情の変化が視認しづらくてちょっと残念なような、まぁ元がWin向けゲームだったならさもありなんというか。個人的にはよく見ると変化のわかる程度の微表情大好きなのでむしろオッケー。屋敷さんはキャラにも合うので特に活きましたね。あれはずるい。
あと何と言うかアングルとかポージングの見せ方が良い? のかな? 名前入力画面のアプリコット好きです。
……主人公の正面顔グラは若干崩れてるなとは思ったけど、正面のバランス取るの難しいもんな……(遠い目) それよりアプリコットの時でも顔を晒してても正体が気づかれないものなんだな~まぁお約束~と流してたのにストーリー中で実はゴーグルつけて目元を隠してると発覚したときはずっこけました。そこは何とか顔グラでも示してほしかったな……表情がわかりづらくなる難点があるのはわかるんだけどこう、うっすら透けて見えるようにするとかで……
・没シナリオ
おまけモードになんてものを仕込んでるんですか。
ざっくりこの3種でしたかね。
母、教師、親友も「生活」してる会話イベント
ミニゲーム担当の3人だけは居場所を固定化されてるし、いつ行ってもだいたい簡単な会話とミニゲームに終始しちゃうんで、たしかにちょっと見てみたかったような、でも「ミニゲームしようと思ったらできない上に長々と話しこまれた」は面倒そうだし没って正解か。
各攻略対象との電話イベント
ストーリー中、電話番号を交換するシーンがあったので『チェリーブロッサム』よろしく通話からのデートイベントがあるかと思いきやなくて、「番号を交換した意味は……?」と気になってたら没ってた。なるほど。
屋敷のデレが強いイベント
TAKUYOなぜ無口無愛想思い詰めてるキャラのデレを本編外でお出ししてくる。本編でデレてる余裕がないからだよ! わかる。お陰で全体の雰囲気が引き締まって思い詰めてる感にブレがなくて良かったです。
3種ともゲームの完成度によろしくない影響が出ちゃうので泣く泣く没ったのわかる、でもどれも各キャラの人間性とか魅力がよく伝わってくるイベントで闇に葬るのはもったいないわかる。楽屋裏を覗けたようで面白かったです。
・おまけ
2024年現在のゲームでは改善されてるんで書かなくても良いかなとは思うんですが。
BGMはちゃんとシームレスでループさせよう。フェードアウトで曲が終わるたびに「ここで展開が変わるのかな」と構えたら何事もなく前の曲がまた始まってシーンもそのまま続くのは「お、おう」と我に返ってしまい入り込みづらかった。
■ キャラ雑感
追記するつもりが字数オーバーしたので別記事にしました。→こちら