何かに似た虫

kohana
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公開:2026/6/15

キッチンに虫がいた。

茶色かった。丸っこかった。小豆くらいの大きさである。そして触角があった。

自分は震え上がった。あれかもしれなかったからだ。数年前まで住んでいたアパートでの最後の5年、自分はあれに悩まされ続けていた。やっと逃げられたのにと一瞬絶望した。

しかし自分はそれには慣れていた。だから長く使っていない殺虫剤の、半透明のプラスチックの蓋をを使って捕獲した。

違和感があった。あれであればこんなふうに簡単には捕まらないはずである。

蓋の上から綿密に観察した。自分はあれの大量発生によりトラウマを負った。しかし、長く続いた闘いから敵の種類と成長過程、雌雄の別を見分けられるようになっていた。

捕獲した虫は一見それとよく似ていたが、どうも違うような気がした。まず、あれを捕獲するのは困難である。それにあれはもっと触角が長い。お尻の形や背中の様子も違う気がする。捕獲した虫には背中にたくさんの縦の筋がついていた。あれにはこんな模様はない。

蓋を外すと虫はオロオロと四方を向き、それなりの早さで逃げようとしたが混乱してひっくり返った。まぬけである。それとも殺虫剤の残り香にダメージを受けたのだろうか。見守っていると元気を取り戻し、周りの様子を探るような仕草を見せ、とことこと壁を伝い始めた。のんびりしている。やはりあれではないようだ。

写真を何枚か撮り、その虫を庭に放した。ネットで調べるとクチキムシの茶色っぽいものによく似ていた。多分これだ。

しかしまだ不安は消えない。もしまたあれの大量発生となったらどうしよう。しかし、あのアパートは見た目はきれいだが実は古かったし、集合住宅ではひとりで対策をしても限界がある。さすがにあんな思いをすることはないだろう。

具体的な経験については読者の方々に不快感と取り返しのつかない心の傷を与える可能性があるため、敢えて書くことは控えた。

今朝天井にハエトリグモが止まっていた。自分はハエトリグモが好きだ。みための点では劣るがアシダカはもっと頼もしい味方である。去年見かけたから、今もこの家のどこかに住んでいるのかもしれない。蜘蛛に守られていればきっと大丈夫だ。

2026/06/15

Kohana

@kohana
エッセイとAuto fiction。 自分の言葉を取り戻すリハビリのために書いています。 少しでも楽しんでいただければ幸いです。