熊を避けてワクチンを打つ

kohana
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公開:2025/10/21

インフルエンザワクチンを打ってきた。

注射は苦手だがワクチンは好きである。ほんの数秒の痛みを我慢するだけで感染症の予防、もしくは重傷化を防ぐことができるのだから素晴らしい。コロナのワクチンも大喜びで受けた。というだけでなく、「RNAワクチンというノーベル賞レベルの発明が今、私の体内に!」と考えて鼻息を荒くした。傍から見れば完全に変な女である。

もっとも、今回のインフルエンザワクチンは受けるクリニックを変更した。

その理由はタイトルの通りである。熊が出たからだ。

去年と一昨年に接種したクリニックは、バスを降りて住宅街を抜け、公園を右手に見てずっと歩いた先にあった。周囲は山に囲まれていた。その近くの十字路に熊が出たのだ。友人は「先週そこを車で通ったんだけど」と青くなっていた。

いくらワクチンが好きでも、熊に襲われるリスクを冒してまで打つつもりはない。自分の住む地域に出るのはツキノワグマであり、ネットでは「ヒグマよりはまし」といわれているが、遭遇しないに越したことはない。しかし、もしこうした理由で緑の多い地域のクリニックの患者さんが減るとしたら、それはそれで気の毒な話だとも思った。

前日からバタバタして今年摂取を受けたのは、子供の頃にお世話になった街中の古いクリニックだった。自分の主治医だった先生は体調を崩して現役から離れており、 今患者さんを見ているのは娘さんにあたる女性だった。栗色の髪を頭の後ろできりりとまとめている、話しやすい先生だ。

自分はアレルギーはない。ワクチンで体調を崩した経験もない。先生のお話では、入浴や運動は禁止だが、腕が腫れなければ酒は常識的な範囲飲んでも言いそうだ。

自分の腕は腫れなかった。そんなわけでワインを飲みながらこれを書いている。もしも今日の文章におかしな部分があるなら、それは酔いのせいである。

2025/10/21

Kohana

@kohana
エッセイとAuto fiction。 自分の言葉を取り戻すリハビリのために書いています。 少しでも楽しんでいただければ幸いです。