歳を取ると時間の経つスピードが速くなる、というのはよく言われることだ。
子供の頃の1年と大人になってからの1年を比べると、子供の頃のほうが長く感じる。大人になってからの1年はあっという間である。
しかし、実は自分はあまりそうは感じない。そもそも子供の頃の1年の感覚なんて覚えていない。しかし、病気で何もできなかった時期は極端に時間が短かかった。実際の時間をぎゅっと圧縮させたようなかんじだ。病気が治ってからは1年が長い。振り返ればあっという間なのだが、過ごしている間は密度が高く、過ぎてみると1年前がとても遠い。ああ、こんな処まで来たんだなと思う。どうにか動けるようになり、ただ寝ているだけだった時期と比べて変化が多くなったためだと思う。
しかし、最近はそうでもなくなってきた。自分の精神も人並みに歳を取ったのか。
と思ったが、それは違うんじゃないか、と友人から指摘された。
「最近の1年が短いのはね」友人は、時間そのものが伸び縮みするかのような口ぶりで言った。「‥‥夏が暑いからだよ」
一瞬どういう意味かと思ったが、この言葉には説得力があった。
今年の夏は5月頃から始まった。暑かった。暑すぎて何をしていたのかよく覚えていない。もちろん室内は冷房が効いており、ときに肌寒いくらいだったのだが、一歩外に出れば化粧なんて一瞬で崩れるほど気温も湿度も高かった。室温は低くてもなぜか消耗した。どうにか必要なことをして、あとは暑さで倒れていた。そんな時期が5ヶ月も続いたのだ。
そして夏が終わるのもいきなりである。愛用のキャミソールが古くなってきたため、新しいものを購入した。受け取ったのは今日、注文した日の4日後だった。その間に季節は秋に変わった。今、自分は長袖の下着を着ている。
そしてこれから急激に気温が下がり、朝や深夜は着る毛布にくるまって、かじかんだ手で勉強やら物書きをするようになるのだろう。大掃除なんてとてもする気になれず、「春が来たら動きだそう」と考え、しかしその春はたった1ヶ月で終わり、またあの脳が溶けるような長い夏がやってくるのだ。
そりゃ1年も短く感じられるはずである。
2025/10/16
Kohana