イギリスかぶれの大掃除

kohana
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公開:2026/3/8

かつて自分はイギリスかぶれだった。ファンタジーが好きで、そのファンタジー好きのきっかけが翻訳物の児童文学だったのだ。そしてその児童文学のほとんどは、不思議でも何でもない話だがイギリスのものだった。あれこれ読むうちに妖精にも興味が出てきて、現地の伝承を集めた本に手を出した。さらにこれは偶然だが、はじめて読んだ海外文学がジェイン・エアだった。かぶれろと言われているようなもんである。

このイギリス熱が一番酷いときに読んだ向こうの児童書に、こんなことが書かれていた。

「春は大掃除の季節です」

いいなあと思った。日本で大掃除といえば冬である。我が家も毎年、年末にゴミをまとめて出したり床にワックスをかけたり、窓を磨いたりしていた。しかし冬は寒い。暖かい春の方が掃除はしやすいのではないか。やっぱり自分はイギリス派だ‥‥と思いつつ、結局は日本人なのでその後も年末の大掃除を続けた。日本人としてはきれいな家で新年を迎えたい。

しかしその後、ひとり暮らしをきっかけに年末の大掃除をしなくなった。大掃除をするほど広い部屋ではなかったからだ。そして3年前に故郷に引っ越したのだが、やっぱり年末の掃除はしていない。寒いからだ。温暖化だとか冬の寒さも前より緩んだとか言われているが、自分の住んでいる地域は毎年恐ろしい寒波に見舞われている。こんな寒い中で大掃除をする気にはなれない。更に付け足すと、我が家の床はワックス不要、スチームクリーナーに至っては素材を傷めるので禁止である。手入は簡単だがつまらない。やる気が失せてしまう。結果、適当に掃除をしてダラダラ本を読むことになる。

ダラダラしたまま春が来ると鼻と喉がおかしくなった。ついに自分も花粉症かと思ったが、外に出るとなぜか収まる。原因は室内の埃だった。そうか、ならば春に大掃除をするべきだ。しかしいろいろ忙しく、その大掃除をせずに今まで来てしまったのだった。念願の春の大掃除が必須になったのに、一体何をやっているのか。

だが、自分のイギリス熱は冷めかけていた。最近は紅茶よりもコーヒーをよく飲む。ヌン活などがブームになってからはイギリスが好きだということ自体が恥ずかしくなり、トライフルやスコーンなんて食べたこともないし、クロデッドクリームなんて名前も知らないという顔をしている。ひねくれ者なのだ。そんなふうに知らないふりをしながら、内心では「にわかが」と思っている。そんな自分に呆れている。ひねくれ者なだけでなく、性格も悪いのだ。

それでも本は読み続けている。最近はアメリカ文学の比率が増えたが、イギリスの作品を読むとなんとなくほっとする(気がする)。安いのをいいことにファージョンやC.Sルイスやトールキンの原書を電子版で買い、拾い読みして感動している。去年読んだ翻訳物で一番気に入ったのはイギリスの若草物語とも言われている『ヒルクレストの娘たち』だった。洋書の中で特に気に入ったのはNicora Skinnerの『STARBOARD』とRichard Pickardの『TENTACLE BOY』でともにイギリスの作品だ。自分のイギリスかぶれは冷めたのではなく、慢性化したというのが正しいのかもしれない。

もう少し暖かくなったら大掃除をして黒ビールでも飲もうかと考えている。ハギスも気になる。

2026/03/08

Kohana

@kohana
エッセイとAuto fiction。 自分の言葉を取り戻すリハビリのために書いています。 少しでも楽しんでいただければ幸いです。