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映像のネタバレ

kohana
·
公開:2026/10/15

最初に読んだときから指輪物語は特別な本だと思っている。

それなのに他の愛読書に比べて再読回数が少ない。あの本は読むのに思い切りがいる。読書はよく旅に例えられるが、指輪物語は人生の半分を費やす長旅か、全く別の人生だという気がする。手に取るハードルが少しだけ高いのだ。

自分は10年ほど家を出てひとり暮らしをしていたのだが、指輪物語は持って行かなかった。幸か不幸か蔵書が愛蔵版だったからである。あれは棚に並べるだけで気分が上がるし、アラン・リーの挿絵も素晴らしい。だが重い。厚い。場所も取る。だから実家に帰るたびに背表紙を見て満足していた。

そして映画もまだ見ていない。存在はとうの昔に知っていた。見なかった最初の理由は近所に映画館がなかったからだ。テレビで放送されたら見よう、そう考えていたのだが、ファンの絶賛ぶりに少し怖くなった。

一度でも映画を見たら、そのイメージで原作を読んでしまうにちがいない。なら見るのはあと3回読んでからにしよう。せめてあと1回。自分は映画を避け始めた。もっとも情報を完全に遮断することはできないので、主要キャラの容貌はすぐに把握してしまった。がっかりしつつ、サムが好きでよかったと思った。彼だけは見分けがつきにくかったからだ。

そんなふうにじたばたしているうちに時は過ぎ、気がつけば映画公開25周年だそうである。来年のホビットの冒険の発売90周年も重なり、熱狂は加速している。自分もつられてモレスキンの文具を買い、トーベ・ヤンソン挿絵版のHOBBITを注文して、今届くのを待っている。

そして映画の件である。SNSのファンアカウントは洋の東西を問わず画像や映像をシェアしたがる。自分はこの夏サムの容姿のネタバレを喰らい、彼の活躍するシーンの所謂切り抜きをほぼ全部見せられ、帰還シーンまで長々と鼻先で流された。

いや、途中でアプリを閉じればいいだろ、といわれれば通りだ。半分は見たくて見たのである。

そんなわけで観念した。正直に白状すると、自分はナルニア国物語のBBCドラマ版はDVDで繰り返し見ているし、ホビット冒険のほうは第1作を映画館で、残りはサブスクで見た。エンデ自身には不評だったはてしない物語の映画第一作は映像に限っていえば素晴らしく、モモは非の打ち所のないできだった。つまり、指輪物語へのこだわりがおかしかったのだ。

来年はまず岩波のトールキン挿絵版のホビットの冒険を買い、シリーズを通読し、更に映画も見ようと思っている。

2026/10/15

Kohana

@kohana
エッセイとAuto fiction。 自分の言葉を取り戻すリハビリのために書いています。 少しでも楽しんでいただければ幸いです。