めんどくさいの極み

kohana
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公開:2025/11/12

自分は真面目で勤勉な人間として通っているようである。

これは十代の頃に罹った病気が治って社会復帰をしてからだ。提出物の締め切り期限は守るし忘れ物もしない。連絡はさっさと済ます。守秘義務を科せられれば墓場まで持って行く。当然の筈だがこれが難しい人は結構居る。最後の項目は特に。

しかし、私は自分のことを、ものすごいめんどくさがりだと知っている。物事をきちんとこなすのは、トラブルになると面倒だからである。すぐに済ますのは、忘れるとおおごとになるからである。と、ここまではめんどくさいの序の口である。

今月は記念日が2回ある。ひとつは誕生日で、もう片方は交通事故で大怪我をした日だ。後者を記念日呼ぶのはおかしいが、生き延びて、あれこれ後遺症を抱えながらも生きてきたことを祝う日と決めている。

記念日にはお酒を飲みたいと思う。しかし、わざわざ買いに行くのが面倒だ。それに自分はお酒を飲むと、赤くはならなくとも寝てしまうタイプである。寝てしまうと何もできない。勿体ないと思う。だから別にいいか、となる。

事故からしばらくしてヘルニアが出た。大きな骨折をすると、完治はしても、のちに不具合が出るのが普通らしい。自分が最も大きく割られたのは骨盤で、これは先生方が「本当に酷い」「これは一生痛みが出る」と顔をしかめていた。その部分に痛みは出なかったが、数年前から座ると肩に、ずんと鈍い痛みを感じるようになった。この痛みというかこりは、骨盤の歪みのせいであるあらしい。対策としてはこまめなストレッチが必要だ。机での作業の最中、30分に1度は立って休まねばならない。実際、ストレッチやリハビリ体操をやると、身体は比較的楽である、

しかし、ここでめんどくさい病が発動する。面倒というより、ストレッチが必要な身体だということ自体を忘れてしまうのである。そして気がつくと、うなじから肩までがねじれるように痛んでいる。しまった、の前にめんどくさいなあと思う。

人をいじめるのも面倒だ。以前、ある一家を洗脳して資産を奪った女性のドキュメンタリーを見た。彼女は洗脳のためたにターゲットの一族を集め、毎日十数時間罵倒したそうである。何千万貰っても、そんなめんどくさいことをしたくない、というのが正直な感想だった。その時間、本を読んでいた方がずっといい。誰も傷つかないし、自分も幸せだ。

ウクライナ侵攻が始まったとき、自分はロシアというのは酷い国だから、二度とロシア文学は読まないし、大好きなロシアケーキも食べない、と思っていた。しかし戦争がなかなか終わらないので(もちろんこれはロシア側に責任がある)業を煮やしてロシア文学を解禁にしてしまった。ロシアの文化まで嫌いでい続ける根気がなかったのだ。怠け者である。更にロシア語にも手を出してしまった。ウクライナ語を少しやったときにキリル文字をマスターし、そのままにしておくのが勿体なかったからだ。(もっともロシアとウクライナのキリル文字は若干の違いがある)

ウクライナ語は、日本語の学習テキストがほとんどない。辞書すらない。今後更に詳しいテキストや辞書が出る可能性があるし、自分がもっと英語ができるようになれば、英語のテキストで勉強を再開するのも可能だ。ロシア語はそれまでのつなぎなのだ。敵を知るためには相手の言語を学ぶ必要があるし‥‥と、心の中で日露戦争時代の某文学者の言い訳を引用しているのは、やはり疚しさを感じているからである。

そう、自分は勉強と本を読むことはめんどくさくない。そのせいで真面目だとか勤勉だとか誤解されている。これが勉強ではなくゲームだったり、読む本が漫画だったりしたら、プライベートの周囲の評価は逆だったはずだ。

自分は運良く勤勉を装えている、怠け者の勿体ながりやである。

2025/11/12

Kohana

@kohana
エッセイとAuto fiction。 自分の言葉を取り戻すリハビリのために書いています。 少しでも楽しんでいただければ幸いです。