トイレの大と小の話

kohana
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公開:2026/1/28

3年前に引っ越しをした。

引っ越し先のトイレは最新式だった。温水とか便座が暖かくなるとかいった、実家と同じ贅沢な機能がついていた。そして水の流れが悪かった。実家のもアパートのもすっきり流れたのに。

尾籠な話で申し訳ないが、流すものの量が多いと水が便器の7割ほどの高さまでわーっと上がってくる。毎回それを見て、あふれ出しやしないかとハラハラする。その割に便器に汚れが残りやすい。

新しい家のトイレは節水式だ。節水だから汚れが落ちないのだろうか。昨夜、眠れなくてついAIに訊いてしまった。

AIによると、節水式のトイレの利用者の間ではそうした悩みは少なくない。また、節水タイプでは水をいっぱいにためて勢いで中のものを流すので水位が上がりやすい。対策としては小ではなく大で流すといい、とのことであった。

自分はむっとした。大で流しているに決まってるじゃん。実家で最初使っていた古いトイレは、小だと申し訳程度にしか水が流れず使い物にならなかった。以来ずっと大で流す癖がついているのだ。AIはどうしてこう、人を小馬鹿にした初歩的なアドバイスをしてくるんだろうか。

これもAIから聞いた話だが、トイレ業界は今、いかに節水するかの競争を繰り広げているらしい。たしかに水は大事である。日本にいると水不足なんてあまり意識しないが、世界的には水危機、水パニック、水クライシス、水破産の時代なのだ。破産か。その一方で海水面の上昇で水没する国もあるからややこしい。ともかく水か少なくて済むのは単純に水道料金が節約できるし、自然とか地球を守るため、所謂持続可能性なんとかのためにもかっこいい、売りになる技術なのである。

水かあ。AIのデータセンターも大量の水を消費するとニュースで聞いた。そのデータセンターの増加が水不足を後押ししているらしい。AIは素晴らしいが、トイレにだってちょっと水を回してよというのが正直な気持ちだ。流しきれないのはいくらなんでも不衛生である。

と、このあたりで昨夜は眠ってしまった。

今朝起きてベッドから降りてトイレに行き、ふと思いついてレバーを確認した。

違う。

自分が大だと考えていた方向は小で、小だと信じていた方向は大である。

自分はこの家に住み始めてからずっと小で水を流していたのか。つまりAIの初歩的なアドバイスは正しかったのだ。申し訳ない。でも、不本意ながら3年間、節水に協力したとも言える。 いや、AIに依存してそれ以上の水を消費してしまったのか。複雑である。

とりあえず次からは必要に応じて大を使おうと思うが、たくさん水を流して水があふれないか少し不安がある。しかし、詰まるリスクを避けるためにも大は使うべきだろう。

そして3年間、多少の汚れを残しつつも小ですべてを流し続けた日本のトイレの技術はすごい。文句をつけたりしてごめんなさい。

2026/01/28

Kohana

@kohana
エッセイとAuto fiction。 自分の言葉を取り戻すリハビリのために書いています。 少しでも楽しんでいただければ幸いです。