いろいろ嫌になったので久しぶりに別荘に行ってきた。
別荘に初めて行ったときはバスを使った。自分が暮らすことになった古い農園には水たまりのような池とそれよりは少し大きな池があった。草が生い茂っていてその間に石が埋まっている。とりあえず家の周りの草を刈って小さい畑を作った。水やりは手持ちのじょうろを使った。家の脇に古い温室のような建物があるけれど直し方がわからない。だからまだそのままになっている。
敷地内には木もたくさん生えていて、奥の方はほぼ森だ。畑を耕したり木を切ったり草を刈ったり石を掘り起こしたりするだけで疲れ切ってしまうので、最初は暗くなる前にベッドに潜っていた。近くに小さな町があったけれど、わざわざ訪ねる余力もなかった。
田舎の暮らしに慣れて体力がついたのか、だんだん疲れにくくなった。よく種を買う雑貨屋さんとはすぐに顔見知りになった。牧場をやっている女性からネコを譲り受け、怖そうなおじさんから釣りを教わった。釣りは難しくてなかなかうまくいかない。緑の雨が降ったときは酒場に集まって町の人たちとおしゃべりをした。
もちろんリアルの話ではない。スターデューバレーというゲームである。
最初はスマホで遊びはじめ、目が悪くなるんじゃないかと思いタブレット版を購入した。ほぼ毎日プレイしていたが、ある日を境にピタッとやめてしまった。当時は現実の世界は夏で、週に数回庭の草を刈らなければならなかった。なんで自分はリアルでもゲームでも草と戦わなければならないのか、とさめてしまったのだ。
そして秋頃から眠れない夜に少しずつゲームを進め始めた。タブレットの調子が悪くなって初期化する羽目になり2度ほどデータが全部飛んだのだが、けっきょく最初からプレイし直している。
自分も昔はちょこちょこゲームをしていたが、あるときから疎遠になった。自分にとってゲームは画面を通して体験する物語、読書とほぼ同じ扱いだったので、どんどんイベントや新しい物語が追加されて追い立てられるようなものについてゆけなくなったのだ。探せば落としきりの、きちんと完結するものもあるのかもしれないが、そこまでしなくてもなあと思う。興味が離れたものに対しては怠け者なのだ。
スターデューバレーのような、別の世界に放り出されてあとは自由にしていいですよ、というタイプのものは読書とは違う楽しさがある。そういえばかなり前にマインクラフトにはまって、池のそばに家を建ててネコを飼って毎日釣りをしていた。楽しかったのだが、これは老後にやる生活ではないか、と考えてやめてしまった。
しばらくは谷には行かないつもりなのだが、家を増築したばかりだし、水辺に仕掛けた籠になにかがかかっているか気になるし、明日の夜お祭りがあるし、新しくもらった武器やパチンコも試してみたいしどうしようかと考えている。今夜行ってもいいし来月の抜歯のあとに入り浸ってもいい、いっそ半年放っておいてもいい。谷は待ってくれている。人生に疲れたときに迎えてくれるもう一つの世界があるのは楽しい。
Kohana
2026/01/30