マスクの使い方

kohana
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公開:2026/1/31

ほとんどの人がマスクをしなくなった。もうコロナは終わったのだ。

と言いたいところだが実際には終わっていない。それに今はインフルエンザのシーズンなのでマスクはつけたほうがいい。自分は人混みでは必ずマスクをつけている。万が一感染して後遺症が残るのは嫌だし、それ以上に持病持ちの母に感染させたくないからだ。

もうひとつ外したくない理由がある。マスクは便利なのだ。

コロナの少し前から面倒なことが増えた。たとえば店ののレジ袋がなくなったり有料になったりした。これは仕方がないとしても、客が買ったものを詰めるための台をいつまでも置いてくれない店が多い。けっきょく今もそのままなので、慣れない手つきで大急ぎで詰めることになる。そろそろ慣れろよと言われそうだが自分は不器用なのだ。こっちは困っているし後ろの人はイラつくし、店員さんは手持ち無沙汰だ。レジ袋はゴミ処理に必要なため別に購入しているので、結局3人の人間を不幸にしているだけに思える。

更にマスクをつけるようになると、レジ袋をくださいとかいりませんとか、フォークじゃなくてお箸をくださいと言っても通じないことが増えた。ある時は葉書を買ったつもりが袋に春巻きを入れられた。帰宅後レシートで春巻きぶんの支払いが済んでいるのを確認し、食べてしまうと後日あらためてはがきを買いに行った。葉書と春巻きか、似ていなくもない。ちなみに春巻きはおいしかった。

そんなある日、マスクの下で変な顔をするとすっきりする、ということに気がついた。店でもバスでも人混みでも、目元はまともな風を装いつつ、厚みのあるマスクの陰でひそかに歯をむき出しにしたり鼻を膨らませたりする。気が向くと英語やフランス語のシャドーイングをする。ヴェルカのロシアグッバイを小声で歌う。ぎすぎすした世の中だがマスクの下は自由だ。周りに聞こえなければ何を言ってもかまわない。外国語ならますます安心である。

この癖が直るまでマスク生活をやめることは難しい。

2026/01/31

Kohana

@kohana
エッセイとAuto fiction。 自分の言葉を取り戻すリハビリのために書いています。 少しでも楽しんでいただければ幸いです。