夢を見た気がする。でも内容を覚えていない。
疲れてはいたが食欲がなかった。だから夕食の支度を後回しにしてコーヒーを淹れ、本の続きを読み始めた。
10ページも読まないうちに強烈な眠気に襲われた。そういえば昨晩はよく眠れなかったんだっけ。とにかく少し横になろうと思った。そして、枕に頭をつけると同時に気絶するように眠ってしまった。
目覚めも突然だった。真っ暗なところからいきなり明るい場所に引き戻されたような感じだ。自分は交通事故の時、臨死体験のようなものを経験しているのだが(脈も脳波もあったので実際には臨死体験ではない)そのときに少し似ていた。
なんだろう、と思った。頭ははっきりしているのに、中に何も入っていない。この「なんだろう」には、ここはどこだろうと、自分は誰だろうと、なぜこうしているのだろうが含まれていた。
それから、何かすごいことがあったはずだと考えた。そうだ、自分はとてつもなく恐ろしい思いをしたのだ。そのためにすべてを諦めた。諦めざるを得なかったのだ。
戦争よりは天災に近かった。それも地球に巨大隕石が落ちるとか、避けようのない災害だ。なんだっけ。
そのときやっと、ああそうか、と気がついた。ここは自分の家だった。帰宅してすぐ疲れて眠ってしまったのだ。世界は騒がしいが、まだ滅んではいなかった。人生もまだまだ続くようだった。
でも現実味がない。全く別の世界の、別の自分になったような気がする。かといって、もうひとつ世界やもう片方の自分のことを覚えているわけでもない。
起き出して湯を沸かし、野菜を切って餃子を焼いた。
油のはじける音を聞いているうちに、自分が自分自身だという感覚がやっと戻ってきた。
2026/09/19
Kohana