わからない話

kohana
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公開:2026/3/2

正直に白状するが、外国の小説がわからない。

自分でもびっくりだがそうなのだ。これは「外国語の本を原書で読めません」という意味ではない。まあたいして読めないのだが、プロが翻訳した本を読んでもわからないのだ。

もちろん文は読めるしあらすじも追える。でも、登場人物の言動が理解できないことがある。なんでそんなところで怒るんだとか、なんでここで笑うんだとか、その台詞は一体どういう意味なのかとか、そうしたことがわからない。

ほかにもわからないことがある。部屋に置かれた家具だか機械だか道具の名前がわからない。もしかして固有名詞なんだろうか。ブランド名か、キズバンとか大判焼きみたいな、向こうで普通に使われている言葉なのだろうか。

だからたとえば主人公が何かを使って何かをしても、一体何がどうなったのかわからないことがある。

これに最初に気づいたのは、子供の頃、図書館で小説誌を借りたときだった。その図書館では雑誌の最新号は持ち出し禁止だったが、バックナンバーは借りることができた。だから面白そうな号を1冊借りた。生まれて初めて手に取った小説誌は重く、翻訳が多かった。作品のほとんどはSFで、ホラーやファンタジーっぽいものも少し入っていた。

巻頭の話は特に難しかった。人間ではないものと人間ではないものが。人間にはよくわからないやりとりをしている。全くわからなかったが、これが本物のSFなのだと満足した。

困惑したのはニューヨークだかどこか、アメリカの都市を舞台にした話だった。不思議なことは起こるものの、その不思議さは理解できる。主人公も友達も恋人も、自分とは肌の色や言葉は違っても同じ地球人だ。でも、その人たちのやっていることや感情や暮らしぶりが全くわからなかった。この記事の最初に書いたように。

更に自分がうろたえたのは、エロティックな描写が出てくることだった。筋に必要ないような(あったのかもしれないが)性的な冗談や思わせぶりな台詞が頻繁に出てくるし、精神分析医もえっちなことばかり言うし、ソファの上にはうちのお母さんが見たら青くなってゴミ箱に押し込みそうな雑誌が放り出されている。

生まれも育ちも半端な田舎の、本ばかり読んでいる地味な女子だった自分は、嫌悪感こそ抱かなかったが首をかしげた。アメリカ人はお盛んなんだなあ、というのが正直な感想だった。しかし実際には逆だそうで、のちに更に驚いた。もっともネットが普及した今は変わっているかもしれないが。

なんでこんなにわからないことだらけなんだろうと思いながら、自分はその後も外国の本を頑張って読んだ。不思議なのは、文学全集に入っているような古い作品にはそうしたわからなさがないことだった。それに、自分が好きな児童文学や異世界ファンタジーもほぼ翻訳だ。なのにあんな風にわからないと感じたことはない。自分が特に理解できないのは、アメリカの都市部の若い人が主人公の話らしい、と段々わかってきた。

日本人には無理なのだろうか。でも、そうした本は翻訳がたくさん出ていてファンもいる。好きな人たちはきっとあの台詞や描写の意味がわかっているのだ。大人になればわかるんだろうか、海外の本をもっとたくさん読めばわかるんだろうか。洋画をいっぱい見ればわかるのかもしれない。

悩みながら大人になって、気がつくと以前はわからなかったような本も楽しんで読めるようになっていた。でも、正直に書くとまだ3割くらいはわかっていないと思うし、お前は全然わかってないよと言われたとしても驚かない。

2026/03/02

Kohana

@kohana
エッセイとAuto fiction。 自分の言葉を取り戻すリハビリのために書いています。 少しでも楽しんでいただければ幸いです。