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脱げない服

kohana
·
公開:2026/8/6

夏物のワンピースを長い間探していた。無地で水色でシンプルなデザインのAラインのワンピースだ。以前ある映画でそんなワンピースを着ていた女性を見て、憧れて似たものを買った。それを色が褪せるまで着潰したので、替わりを探していたのだ。

しかしなかなか見つからなかった。何年も探し回っていると、突然理想通りのワンピースが某大手ネットショップのおすすめに現れた。冬だったせいかえらく安くなっている。

早速それを買った。そして忙しかったのでサイズだけ確認し、試着もせずにしまい込んだ。今思えばそれがよくなかった。

先日、真人間のふりをすべき用事があった。つまりジュエリーよりも絶版の文学全集を欲しがり、飲み食いも化粧もせずに本に埋もれて過ごすのが好きな変人であることを表に出すべきではないということだ。といっても、それほどかしこまった格好で行く場でもない。あのワンピースがちょうどいいなと思った。念のために書くがデートや見合いではない。

滅多に使わないおしゃれバッグを引っ張り出し、化粧をして髪を整えワンピースを着た。なんだか変な気がしたが、ともかくその用事は無事に済んだ。

家に戻って服を脱ごうとしたとき、違和感の理由に気づいた。

これはどう脱ぐんだ。

後ろにはファスナーが着いているが、うなじからウエストまでしかない。前はブラウスのようにふたつに分かれており、ボタンがついているが飾りである。右と左をボタンで縫い合わせているだけなのだ。つまり前も後ろも襟が開かない。痩せているので着ることはできたが、脱ぐのは困難である。

しばらく悪戦苦闘したものの、諦めてはさみで切ることにした。しかしこの理想のワンピースを切り裂くのは惜しい。汗だくになりワンピースに身体を斜めに突っ込んだまま悩みに悩み、ボタンを取れば前を開いて脱ぐことができるのではと思いついた。下手くそな手つきでボタンを切り、どうにかワンピースを脱いだ。

ルームワンピースに着替えてソーダ水を飲みながら改めてワンピースを見た。これは不良品だ。でもこんな不良品なんてあり得るのだろうか。あまり言いたくはないが、外国製の安ものだからか。実は自分はこのブランドのワンピースを他に一着持っており、そちらは問題なく着ることができる。だから油断したのである。

他のを探すしかないか。しかしこのデザイン似にた、きちんと脱ぎ着のできるワンピースに出会えるとは限らない。高ければいいとか有名ブランドならいいというわけではないのだ。

どうにか直せないだろうか。自分は玉留めさえできない不器用な人間だ。ミシンも持っていない。だからボタンホールを作るといった高度な作業は無理である。でもスナップを使えばどうにかなるのでは。

早速スナップボタンを注文した。スナップで前を閉じられるようにして、ボタンを付け直せば着続けることができるかもしれない。

それをつなぎにしてまた理想のワンピースを探すつもりでいる。

2026/08/06

Kohana

@kohana
エッセイとAuto fiction。 自分の言葉を取り戻すリハビリのために書いています。 少しでも楽しんでいただければ幸いです。