ハロウィーンが近い。いつの間にか日本でも騒ぐようになった西洋のお盆のような祭りだが、ハロウィーンといえばカボチャである。
子供の頃、自分はカボチャが苦手だった。オレンジの身の部分はどうにか食べられたものの、緑の皮の部分は好きではなかった。苦かったからだ。
我が家はお腹がいっぱいならば残してもかまわなかったが、好き嫌いで残すときはひと口食べて席を立つのが決まりだった。だからいつも、いやいやながら少しだけ皮の部分を食べていた。皮はどんなに煮ても身と比べれば固く、苦かった。大人はどうしてこんな苦いものを喜んで食べるんだろう。
以前読んだ話によると、苦みやえぐみ、渋みといったものは、身体が本能的に毒だと感じて拒否するらしい。苦みをまずいと思う子供の感覚の方が、動物としては正しいのだ。大人になると舌が鈍感になるのか、苦くたって毒ではないと学習するのか、苦みも味わえるようになるのだそうだ。
それが事実なのかはわからないが、いつの間にか自分もカボチャの皮をおいしいと思って食べるようになった。カボチャ以上に苦かったほうれん草も好物になった。数年前はピーマンにはまり、当時利用していたスーパーの地産地消コーナーで買った生産者の名前入りのピーマンを、拝むようにして食べていた。輸入物のカボチャは比較的価格が安定していたので、ハロウィンや冬至に関係なく常食するようになった。コロナが流行してからは免疫を上げてくれる気がしてカボチャ食いは加速した。
そんなある日、朝起きて珈琲を飲むと身体がだるくなった。悪寒もするし立っているのも辛い。なのに熱も咳もない。念のためにかかりつけの病院に行くと、先生は脈と血圧を測り、いつになく真剣な顔で私の白目を確認した。それから、「まさかとは思うけど」といいながら尿と血液を採った。検査結果は1週間後に出るとのことだった。
特に薬は出なかった。部屋に戻って横になり、手を額に当てようとしてぎょっとした。手のひらの、親指の下が黄色いのだ。びっくりして身体のあちこちを調べると、踵は黄色を通り越してオレンジ色になっていた。
わかった、と自分は思った。これはカボチャの食べ過ぎだ。先生は自分の肌があんまり黄色っぽいので、黄疸を疑って血液検査をしたのだ。子供の頃にも一度、ミカンの食べ過ぎで額と手のひらが黄色く染まり、大騒ぎになったことがある。
もちろん血液検査の結果は異常なしだった。自分の体調不良は今思えば、冷えと水分不足と気圧とホルモンバランスによる一時的な不定愁訴だった。
以来、カボチャだけは1日150グラムまでと決めて調理するようになったが、最近増加傾向にある。
2025/10/12
Kohana