時間の風に吹かれて雨音は靡いている
西の夕景の紅はひらひらと蠢いている
あなたの声を忘れる前に
あなたの声で別れの挨拶を聴きたい
今だけはひたむきに揺らいでいる
自我の揺らぎを感じる時間
束の間の私を掴み取ろうとして
広がった天井へ手を伸ばす時間
時間の風は揺らいで
やがて弱まっていくだろう
それまでのせせらぎに
今は耳を澄ませる時間
まもなく体を空間へ溶かして
再び練り上げるための時間
優しい嵐の優しさを知るために
厳しい自由の厳しさに身を晒す時間
私から放たれる全てのものに
責任を有するようになる時間
私を作り上げてきた全てのものに
私の声を聞かせる時間
あなたの声が聞けなくなる前に
私の全てを知らせる時間