銀座にある由緒あるミニシアター、シネスイッチ銀座の閉館が発表された。それに合わせたわけではないのだが(本の会は発表前に行われている)、今回紹介する本はシネスイッチ銀座にゆかりのある一冊だ。
俳優の片桐はいりさんは、18歳の頃から舞台に立ちながら、銀座の映画館、当時の銀座文化劇場(現シネスイッチ銀座)でもぎりのアルバイトをしていた。その頃の思い出が綴られている。
映画愛、そして映画館愛にあふれたエッセイ。かつてのミニシアターの空気感が伝わってくる、豊かで温かい文章が印象的。映画館にはさまざまな人が集まる。観る立場、働く立場から、その空間ならではの面白さや愛おしさが描かれている。
各エピソードのタイトルもひねりが効いていて、「Wの喜劇」や「パルプ・コレクション」など、名画のタイトルをもじった遊び心が効いている。ユーモアたっぷりに書かれており、気軽にさくさく読める。
同じ著者によるわたしのマトカもおすすめ。こちらは映画『かもめ食堂』の撮影で滞在したフィンランドでの日々を綴ったエッセイ。どちらを読んでも、片桐はいりさんの旺盛な好奇心と、人や場所に対する温かいまなざしを感じる。
『もぎりよ今夜も有難う』は大学生のころに購入した本で、たびたび読み返すお気に入りの本。私は田舎出身で進学を機に上京したのだが、東京には驚くほどたくさんの映画館があり、時間を見つけては映画を観に行っていた。大学の近くにもミニシアターが何軒もあり、わざと空きコマを二つ続けて、講義の合間に映画を観ることもあった。休日は名画座にこもり、リーズナブルな料金で何本も映画を観ることもあった。
社会人になってもしばらくはそんな生活を続けていたが、生活環境の変化もあり、ミニシアター系の映画館から少し足が遠のいてしまった。
シネマライズやシネマカリテなど、当時行ったことのある映画館も閉館してしまった。最近は配信が早く、映画館で上映される期間も短くなり、タイミングを逃してしまうことも多い。『もぎりよ今夜も有難う』をあらためて読んで、やはり映画は映画館で観たいなという気持ちになった。
埼玉県本庄市には、movie theater THE SPOTという約築100年の古民家を改装した映画館がある。コーヒーも絶品らしく、ずっと気になっているのだが、遠いうえに上映は月に一度。なかなか予定が合わないけれど、いつか行ってみたい。