まえおき
社会人なりたてのころから月に一回ずつ、とあるバーで開催される本・映画をおすすめする会に参加している。
特定の本や映画に対しみんなで感想を言い合うという会ではなく、参加者が周りに伝えたいと感じた作品を思い思いに紹介し、他の参加者はそれを聴いて、意見感想を言い合ったり、言い合わなかったりする。少人数の会でみんな顔見知りだし、漫画やドラマなどでもOKなので、その気軽さと雰囲気の良さで続いている。
私は説明したり、一方的に長い話をするのが苦手なので、事前にiPhoneのメモ帳にまとめるのだけど、せっかくなら他の人にも見える形で共有したいと思った。でも数字を意識してしまうのは嫌なので、しずかなインターネットは公開場所として適切だと感じた。いつまで続くか分からないが、最近長文を書くことも少なくなってきているので、こつこつやりたい。
映画ベルサイユのばら
3月の映画の会では映画ベルサイユのばらを紹介する予定だ。
原作の漫画は過去本の会で紹介したことがある。(ほぼほぼみんな既に読んでいて紹介の意味がなかった)有名作なのでざっくばらんに紹介するがフランス・ブルボン朝後期、ルイ15世末期からフランス革命でのマリー・アントワネット処刑までを描いた作品。前半はマリーとオリジナルキャラクターであるオスカルの2人が中心のストーリー、中盤以降はオスカルが主人公となりフランス革命にいたるまでの話。歴史漫画としても面白いが、恋愛という要素が入りファンタジーの想像ができる漫画。どちらも濃厚でどちらの面から見ても面白い。
まず映画のPVが公開されて驚いたのが、嫁いできたマリー(序盤)とバスティーユ(終盤)のカットがあり、1本の映画でまとめてやるの…と。よくある前編後編だとか、1部ずつ期間をあけて公開だとかそういう方式で上映も可能な作品だから驚いた。でも実際に映画を観た後はこの1本で最初から最後まで駆け抜けていって良かったと思った。
原作漫画で好きなシーンはたくさんあるが特に好きなシーンを挙げると、
デュ・バリー夫人対してマリーが「今日はベルサイユは大変な人ですこと」と言い、屈辱から涙を流したところ、ポリニャック夫人がロザリーに言った「文句があるならベルサイユへいらっしゃい」や、オスカルのドレス姿、マリーが処刑をされる場面など(みんなが絶対好きであろうところ)
ほぼほぼ以上のシーンはカットされていた。セリフなしでPV風に場面だけ映るなどはあったけど。おそらくデュ・バリー夫人に対面するマリーが涙を流すシーンが流れ、え!?名シーンがもう終わった!?となった。とはいえ本筋から外れたところなので、この程度の表現でよかった気もする。
その分メインキャラクターである4人、マリー、フェルゼン、オスカル、アンドレに焦点を当て深掘りしていた。この4人のキャスティングが見事で、オスカルが沢城みゆきさんで、マリーが平野綾さんでフェルゼンが加藤和樹さん、アンドレが豊永利行さん。みんな素晴らしいけれど、特に平野綾さんのマリーがとても輝いていた。幼少期のマリーはとても愛らしく、フェルゼンと愛し合うようになったマリーからは覚悟と気品を感じ、年月が経つごとに声色が変化していった。マリーは周囲の人や時代に左右、翻弄されたりする、作品の中でも変化の多いキャラクターだと気づいた。
現在ミュージカル舞台でも活躍されている平野綾さんをキャスティングしたのは納得で、というのもこの映画は音楽シーンがたくさんあったから。ミュージカル映画ではなく、PV風に各キャラクターの心情が歌われるシーンがところどころ入り、やや間延びを感じるところもあったのだけど、画面が華やかでとにかく美・美・美……平野綾さんの歌声でより輝きを増していたと思う。宝塚経由でミュージカル自体が好きな観客も多いだろうから、音楽シーンを取り入れ、ミュージカル俳優をキャスティングしたのはピッタリだと思った。
他にもアランが武内くん、ジェローデルが江口拓也さん、ベルナールが入野自由さんなど良い声で溢れていた。私は男性キャラクターの中ではアランが好きなので、オスカルへの感情を自覚するシーンは武内くんの声でちょっと観たかった。一番驚いたのがロザリーが早見沙織さんで、早見沙織さんなのにセリフが二言しかなかったところ…
話を戻すと、マリー、フェルゼン、オスカル、アンドレの4人をピックアップしたのは正解だと思った。この4人はそれぞれが対照的なんですね。アニメ版のエンディング曲「愛の光と影」はアンドレ→オスカルを歌った曲だけど、マリーとオスカル、フェルゼンとオスカル、フェルゼンとアンドレもそれぞれ立場だとかパーソナリティー、ジェンダーなどを対比させて際立たせてるんだなと気づいた。
物語は進み、フランス革命の始まりとされるバスティーユ牢獄の襲撃で終わりを迎える。オスカルがマリーと袂を別れ、衛兵隊に異動したあたりから涙腺がアレだったんですけど、このあたりで感極まってめちゃくちゃ泣いた。
人々の怒りと悲しみのうねりが革命に発展して、否応なしに巻き込まれて行くキャラクターたち。バスティーユ牢獄の襲撃を皮切りにフランス革命が起き、王政が終わりナポレオンが出てきたが混沌とし、また再び革命が(レミゼ)…と歴史と人って面白い。最初から最後まで2時間あまりに革命にいたる話(と恋愛)を詰め込んで、一気に観れたのは本当に良かったと思います。前編後編とかに分かれていたらきっとこの熱は続かなかった。鑑賞後、なかなか現実に戻ってこれず、しばらくぼーっとしながら帰宅した。「愛あればこそ」をエンドレスで聴きながら電車乗った。本当に愛が凄い映画だった。