渋谷〇〇書店と本のガチャ

こめたべ
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公開:2025/8/14

6月、宝塚歌劇の『ZORRO THE MUSICAL』を観劇するため東急シアターオーブに通っていたのだが、劇場の下、渋谷ヒカリエの8階に素敵な本屋を見つけた。

開演時間まで時間があったので、暇つぶしにアートギャラリーなどがある8階をうろうろしていたのだが、その端っこに「渋谷〇〇書店」があった。入ってみると、大きな壁に本の表紙が等間隔にならんでいる棚があって目を引いた。1冊ずつ書店名が違い、本のジャンルも雑多だった。調べてみるとここは共同書店だそう。小さな本屋さんの集合体で、各書店オーナーは本棚のひと区画を借り、そこで自身が置きたい本を展開しているようだ。小説から画集、ラノベにZINE…とにかく雑多で楽しい。

いろいろ見て回った結果、一番興味を持ったのが「GACHA-BOOKS」の本だった。数冊の本が並んでいたが、全て袋に包まれて中身は見えない。ガチャという書店名だが、本の紹介カードが付いており選ぶ自由はある。紹介文を読み比べたがどれも〇〇代女性or男性、少女、少年のように主人公のパーソナリティが書かれていた。誰目線の話なのかは先に知っておきたい。

写真の本を購入した。理由は紹介文に惹かれて。私はジム・ジャームシュやヴィム・ヴェンダースの映画みたいな淡々とした日常を繰り返す、特に何も大きなことが起きない話が好きだからだ。家に帰り、袋を開けると藤堂志津子さんの『アカシア香る』という本が出てきた。

読んでみたが端的にいうとあまり好みな本ではなかった。母親の看病のために故郷札幌に帰り、そして母親は亡くなり、新しい仕事を始める。同級生たちと交流しながら、昔との違いを再認識しつつ少しずつ進んでいくという話だった。ところどころバブル時代を感じて昔のドラマを観ているような気分になり、自分とのズレを感じた。必ずしも読書体験に共感を求めているわけではないが、ズレがありすぎると頭で噛み砕けない。もう少し歳を取ればズレなく読めるんだろうか。おそらく自分では選ばなかったのではないかと思う。

本を買うとき、人の紹介、口コミ、書店で見かけたから、表紙が良かったからなどさまざまな選んだ理由があると思うが、世の中にはたくさんの本があり、こうした偶然の出会いも面白いなと思った。「GACHA-BOOKS」には交流ノートがあり、購入者と店主がそこでやり取りしていた。こういう小さなコミュニティは楽しいし好きだ。8月もミュージカル『レ・ミゼラブル』ワールドツアースペクタキュラーを観劇しに東急シアターオーブに行くので、また渋谷〇〇書店に寄りたいと思う。