ミュージカル『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を観てきた

こめたべ
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公開:2025/7/10

タイトルの通り観てきました、劇団四季版!

ミュージカル『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の開演前。緞帳の写真

作成が発表されてからずっと楽しみにしていた。そもそも映画自体が面白いし、ブロードウェイで上映されているのを輸入しているから、面白くならないわけがないと。劇団四季の会員向けに先行抽選がありそちらでチケットは入手した。当たったチケットは公演開始から3ヶ月経った7月のもので、2連番だったので夫を誘った。

原作は1985年公開のアメリカのSF映画。監督はロバート・ゼメキス(他には『フォレスト・ガンプ/一期一会』が有名) PART2、3と続編も作られている。今回1作目をミュージカル化している。こちらのミュージカルが開幕してから、ニュース番組で劇団四季の方がインタビューに応えられているのを観た。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を劇団四季で上映する経緯としてコロナ禍の影響があると話していた。コロナ禍で大打撃を受け、もっと観客層を広げようと。演劇、ミュージカルを観に行くと女性客が大半をしめる。劇団四季のディズニー系作品だと子どももたくさん見かけるが同伴者は女性のみが多い。インタビューでもお母さん娘さんは観劇に、お父さんはお留守番(もしくは違うこと)をしているという現状を話していた。確かに『バック・トゥ・ザ・フューチャー』は老若男女に受け入れられる面白い映画だし、お父さん世代にも刺さるだろう。実際に劇場に行ったら体感3分の1くらいが男性客で他と比べて比率が高いと感じた。実際私も夫を誘ったし。

前置きが長くなったがとっても面白かった。幕間の時間に至るまでワクワクしっぱなしだった!舞台映えするコミカルなキャラクターたちにマーティのバンドに歌、時代設定、ミュージカル化されるのも納得だった。こんなやついたな〜とか名場面が再現されていて、映画ファンは嬉しいだろう。私的にはビフの取り巻きで3Dメガネをずっとかけているやつが再現されていたのが嬉しかった。あと、映画内でマーティが50年代にタイムスリップしたと分かりやすく表現するため、1985年では市長のゴールディー・ウィルソンと出会うというシーンがある。映画内ではたくさん出てくる訳ではないが印象的なキャラクターだ。ミュージカル版ではソロ曲もあり、劇中何度も出る「何事でも為せば成る」という重要なセリフも彼の発言からだった(と思う)。脇役だったキャラクターをミュージカル版では上手く使い、物語を今後の展開を分かりやすくしている演出と筋・構成が良いなと思った。

マーティもマーティで、ドクもドクだったが、何よりジョージがジョージすぎてビフがビフすぎて素晴らしかった!私の観た回はジョージが斎藤洋一郎さん、ビフは神永東吾さんだった。ジョージは冴えないキャラクターとして描かれていて、大人になってもビフからいじめられている。タイムスリップする前、1985年のマーティが不幸に感じていた原因でもある。マーティのタイムスリップを経てがらりと運命が変わり、かなりイケイケに変わるのだがそのギャップが面白い。そのギャップを持たせるには元のジョージをとことんダメに描かなくてはいけない。斎藤洋一郎さんの演技が素晴らしかった。どこからどう見ても知っているジョージで、でもジョージはこんな風に踊ったり歌を歌うんだという新しい発見もあった。ヘタに見えるようにでも様になる様に踊るのって大変なのではないかと思う。幕間の間、タイムスリップ後のジョージはどういう感じになるのかと期待していたので、実際に登場するシーンでは、待ってました!!という感じだった。

ビフ役の神永東吾さんはJCSのジーザス役で見たことがある。ジーザスは体を覆うのっぺりとした衣装なので、神永東吾さんが背が高くてムキムキなことを知らなかった。ジョージがひょろひょろなので余計にガタイ良く感じる。ビフって嫌なやつで嫌なこともたくさんしてその報いを受けたりするけど、コミカルさもあり良い悪役だなと思う。最後、ドクが乗ってきたデロリアンを凝視してきてこれPART2に繋がるやつ…?と思った。またビフのソロ曲があったが、神永東吾さんのこぶしが効いた歌い方が好きだな〜と思ったし、JCSがもう一度観たい!とも一瞬だけ思った。

ソロ曲といえば、2幕が始まってすぐのドクの「21st Century」がすごい良かった。子どものころ想像したような近未来的な曲・演出で、ダンサーもそんな感じの衣装を着ていてどこか懐かしさがある。2幕開けのワクワク感とドクの未来への希望と探究心に溢れている曲。この曲が終わってからドクが高速移動してたけど何も分からなかった。周囲から驚きの声が上がっていた。

他にも映画をここまで再現するんだ!というシーンがたくさんあって大興奮だった。映画を観てなくても楽しめる舞台になっていたけど、知っていたらより魅力に感じる舞台だと思う。デロリアンがタイムスリップした後にできる火のタイヤ痕も見事に再現されていた。本当の火を使っているのにすぐに消えて、どう操作しているんだろう。また生オケ・生バンドだったが、テーマ曲が流れるところでは感動した。

最後デロリアンが発進するシーンがすごい。運良く前方センター席だったのだが、目の前にデロリアンがきて、アトラクション?と思った。他にも没入感ある演出がたくさんあって、舞台作品で4DXでアトラクションで…と「生の体験する」ということをとことん意識した作品だったと思う。デロリアンもそうだし、スクリーンを使った演出、マジック的な高速移動…観た人が楽しい、と思う様々な工夫や仕掛けがされていた。できる限りの演出を詰め込んでいる舞台だった。なぜ舞台で演じるのか、なぜすでに別媒体である作品を舞台化するのか、ということをものすごく考えているのが伝わってきた。こういった姿勢は他の作品でも感じていて、劇団四季のこういうところが好きだなと思う。

ソワレ公演だったので、終わったら蕎麦とか簡単なものサッと食べて帰るかと開演前は話していたのだが興奮しっぱなしで終わってからも余韻が抜けず、ビールを飲んでレバニラを食べながら舞台の話をずっとしていた。