今年は2冊のホラー小説を読んだ。よく読むジャンルではないのだが、8月の読書会で時期柄ホラー小説を何冊か紹介されてた方がいて気になった2冊を借りた。(読書会・映画会の参加者はなぜかホラー好きが多い)
私は怖がりなのに怖いもの見たさでそこそこホラーは好きで、事前チェックのうえ触れている。ジャンプスケアが大の苦手なので映画はあまり観れないが、くだらない(笑ったり突っ込めたりする)B級ホラー映画は好きだ。
本にはもちろんジャンプスケアはないが、背筋著『近畿地方のある場所について』は最後読者に呪いをぶつけてきたのと、袋とじの画像がかなりトラウマだ…今公開中の実写映画にこの画像(写真)が出てくるそうなので映画館では観れない。
今回読んだのは上条一輝著『深淵のテレパス』と井上宮著『ぞぞのむこ』の2冊。どちらも朝宮運河著『現代ホラー小説を知るための100冊』で取り上げられていたようだ。
深淵のテレパス
PR会社で働く高山カレンは怪談を聴きに行かないかと会社の部下に誘われる。大学のオカルト研究会の怪談会で、1人の女学生の話を聴いてから、怪奇現象に悩ませることになる。暗闇があると、べちゃっと、濡れた雑巾が落ちるような音と共にドブ臭いにおいが漂ってくる。光があればその怪奇現象は起きないが、次第にカレンの精神は蝕まれていく…そこに登場するのが、YouTube「あしや超常現象調査」の2人組。カレンの身を守りつつ、怪奇現象を調査していくという話。
ホラー小説より、ミステリー、探偵ものと言ったほうがしっくりくる。するすると謎が繋がり解けていくのが気持ちいい。夜に読み始め、そろそろ止めて寝なきゃという時間になったが先が気になり止まらなかった。
気味が悪い話だが、YouTube「あしや超常現象調査」の1人、晴子はさっぱりとしたキャラクターで頼もしく話に爽快感を与えている。この2人組を中心にシリーズできそうな感じ。綺麗に終わっていくが、若干の気持ち悪さ、不気味さを残していくのはやはりホラー小説。そんなに長くなく、読書に呪いをぶつけてこない(次はお前だ的な)のでかなりライトに読めた。登場人物たちが慌てるシーンがあまりなくて新鮮に感じた。
ぞぞのむこ
短編集で5つの作品と1つのショートストーリーが収録されている。架空の街「漠市(ばくし)」を舞台として、漠市での呪いのような怪奇現象のような、奇妙で不条理な気味の悪い話が描かれている。短編のタイトルは「ぞぞのむこ」「じょっぷに」「だあめんかべる」「くれのに」「ざむざのいえ」とあり、一見どんな話なのか分からないが、各話を読むとそういうことね、となる。
漠市には「アタサワ(あたらずさわらずの略)」と呼ばれるスポットがあり、漠市に住む人は決してそこに近づかないという。他にも漠市には禁忌やルールがたくさんある。
因習村のような地域もののホラーだが、面白いのは漠市には普通に生活が営まれているし、人里離れた隔離された空間でもなく隣町からも普通に行き来できる。日常の中にアタサワがあり、アタサワと共に生活していてアタサワハザードマップなるものもある。漠市で生活している人は上記のように共に生活をしているが、外部の人の中には軽んじたり信じずアタサワに触れてしまう人もいる。そんな触れてしまった人たちの顛末がそれぞれ描かれている。
まさにジャパニーズホラーという、じっとりとした雰囲気。それぞれアタサワに触れてしまう人たち視点で描かれているが、忠告お構いなしにどんどんバリバリ禁忌を破っていくから、毎話もうダメですわ…となる。綺麗に堕ちていくから、逆に?爽快感があったりする。危機察知能力って大切。
漠市は架空の街だから、安全地帯からあるかもしれないどこかのホラーを知るという感じの楽しみ方ができて、とても面白かった。『近畿地方のある場所について』は近畿地方と実在の場所を出してるから怖さが増す。(根に持っているように見えるが『近畿地方のある場所について』も好きです)
この2冊を読んで、ホラー小説楽しめるじゃん!となったので自分から探してみようかなと思った。ホラー小説はサクッと読めるところがいいエンタメですね。