ショックだった。

komorebi
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友達と電話をした。東大受験を数日後に控える状態での電話。

「え、なにそれ」「そんなのアリなの?」「国語は?社会は?」「ちょっと理解が追いつかない」「仲間だと思ってたわ」

私が一般入試を受けないと伝えたとき、彼は目に見えるほど暴力的になった。「そっか、留学も大変だったもんね」と吐き捨てられたような台詞。

「〇〇は、なんか精神を病んで引きこもりになったりしてたよ」「〇〇は、なんか共テやばかったって言って、やばそうだった。今音信不通でどうなってんのか分からないんだよねー」圧倒的な他人感と、自分はそうはならなかったという透けて見える優越感。

それに対して、言い返す言葉もなく「まぁ私は受験アンチだからさ笑」と誤魔化したように笑う。真正面から議論をぶつけたところでなにも生まれないことを予期して、私は引くことにした。自分の大切な信条まで壊されてたまるか。

みんな頑張っていて本当にすごいなぁと思っていた1時間前の私の能天気さが馬鹿馬鹿しく思えるほど、この社会は毒に侵されていた。衝撃だった。

自分の周りにいる人々は、人生を自分で切り開くことにワクワクしていて、自分の意思で自分にとって意味のある人生を送ることに希望を見出している人たち。心から尊敬しているし、大好きな人たちばかりだ。でも、ここが理想郷すぎたのかもしれない。実際の世界はそんなことない。

受験のシステムは人間の尊厳を失わせる、皆を競争させて心を麻痺させるプロセスだって、表現の仕方は色々あるけれど、受験の害なんてみんなが感じていると思い込んでいた。みんなそれを分かった上で嫌々やるのが受験なんだと思ってた。…違った。

今年はどんな一年だった?楽しかった?と投げかけた問いに対して、自分の偏差値の上昇を誇らしげに語る彼を見て、足元がぐらぐらした。社会ってこんなんだったっけ。何か、こう人間らしい温かいものがあるはずだ、こんなはずじゃない、といくら足掻いてみても、出てくるのは高慢と軽蔑だけ。

こんな社会に自分は帰るのだろうか。もう「帰る」という言葉すら使いたくないほどに嫌悪感が込み上げてくる。自分の知っている人たちが、自分の好きだった場所が、侵されていく。壊されていく。描いていた理想が音を立てて崩れ落ちる。なにをやりたいんだっけ。今まで私が見ていた豊かな社会なんてどれも、妄想に過ぎないのではないか。

私もいずれかはこうなってしまうのではないかという不安が頭によぎる。自分は大丈夫だと信じていたいけれども、そんなの誰にも分からない。自分の大切なものを守り続けたい、信じ続けたいと思うけれど、もう自信がなくなってきた。あぁ。こんな社会に私は本当に戻りたくない。