彼のことも彼女のことも、もっと知りたいと思っていた。絶対に自分がまだ分かっていない何かがあるはずだ、というような、その人の核心に触れてない感覚を、直感でふたりともに感じていた。
すごくふたりのことを知りたかった。
ものすごく「生きている」人たち。そんな言い方は変かもしれないけれど、それでも、この村で生きているふたりを見ていると、そうか、ふたりはしっかり生きているんだなって思う。
奥底にある不安に焦りつつも、一日一日を前向きに生きている彼と、目の前にある苦しみに、自分なりに方法を模索しながら前へ進もうとしている彼女。ふたりとも人生と真っ直ぐに向き合っていて、自分の人生に迷っているからこそ見える、真の姿が、ふたりともに見えて、それがすごく幸せで温かい。
ふたりとも成長している、と感じる。迷いながらも、自分なりの解決策を編み出そうとして、自分の人生ってどんなふうに歩んでいきたいんだろうっていうことに、しっかり向き合おうとしている。
そうしている人を見るのがわたしは、とことん好きだ。
そして、その人の対話を重ねる中で、その人のことをもっと知ることができた瞬間が、一番尊い。人生についての問いは、深い。その問いを深めている間に、今まで知らなかったその人の哲学が少し顔をのぞかせる。今までは、好きではなかったかもしれない部分が、理解を経て、好きになる。愛おしくなる。わたしは、人の欠点や弱みこそがいちばん素敵だと思っている。穴を埋めようとする行為や、隠そうとする行為、そこに向き合おうとする行為、その全てにその人らしさを垣間見ることができるから。
すごく素敵だと思った。ふたりとものことを。大好きだと思った。
今まで見ることができなかった側面を見るだけで、ここまでひとのことを好きになれるのだろうか。自分でも驚くほどに、愛おしさで胸がいっぱいになっている自分に気づく。誰かを知るってことは、誰かを愛するってことに直結しているんだろうなと思う。
「わたしは、この人に会うために生まれてきたって思うために生きているよ」と、以前ある人が語った言葉を思い出す。
別に語らなくてもいい。ただ、そこに人がいること。その人が存在しているだけで、そこに物語がある。その物語を開いてみたい。その物語が何を明らかにしようかなんて関係ない。でも、その人が時間とともに綴ってきた物語は、それ自体が何よりも豊かで温かいと思うから。そして、他人と何かを「分かり合える」と感じる瞬間が、いちばん私が幸せを感じるとき。そんな幸せをこれから一生かけて築いていきたい。
そう。そうやって、愛で満たされた人生を送りたいんだ。
2024/2/17