旅の始まりは順調だった。2月12日にパリへ向けて出発し、バルセロナ、マドリード、ローマ、フィレンツェ、ヴェネツィアと巡った。
3月7日、ミュンヘンに到着し、ユースホステルに荷物を預けて市内を散策した。しかし、帰ってみると愕然とした。自分と友人のMacbook、友人のiPad、近くの韓国人の現金が盗まれていたのだ。ロッカーの南京錠は破壊されていた。警察に通報したが、調書を取るだけで何も行動してくれない。
幸い、盗まれたMacbookにはAirTagが付いていた。3月8日、AirTagの反応を頼りに犯人の追跡を開始した。犯人はミュンヘン駅から移動を始め、夕方にはフランクフルト駅で停止した。ドイツ連邦警察に協力を求めたが、AirTagの情報共有がうまくいかず、翌朝フランクフルト駅へ向かうことにした。
3月9日、フランクフルトに向けて出発したが、寝坊して始発の新幹線に乗り遅れてしまう。犯人はその間にフランクフルトから移動し、ドイツ北部のアーヘンへ。現地の警察に協力を求めるが取り合ってもらえない。犯人を追ってアーヘンへ向かうが、すでにブリュッセルに逃走していた。深夜2時、AirTagの反応から犯人の車を発見するが、逃げられてしまう。
3月10日、AirTagがブリュッセル市内のアラブ人街で反応。中古品ショップに絞り込むが、警察は非協力的だ。ロンドンでのハッカソンに間に合わせるため、4万円のパソコンを購入せざるを得なかった。
3月11日、AirTagの反応が警察署近くで確認される。ようやく警察に事情を理解してもらい、同行してもらうことができた。路上駐車された車を発見し、その車からAirTagの反応を確認した。これで盗まれたMacbookを取り戻せると期待に胸を膨らませた。
しかし、車を詳しく調べてみると、Macbookは見当たらない。車内にあったのはAirTagだけで、肝心のMacbookは別の場所に移されていたようだ。犯人はAirTagの存在に気づいており、わざとAirTagだけを残して警察を欺こうとしていたのだ。
結局、私たちは犯人の術中にはまってしまった。AirTagを頼りに追跡してきたが、それも犯人の罠だったのだ。盗まれたMacbookを取り戻すことはできず、犯人を捕まえることもできなかった。無力感と絶望感だけが残った。
この経験から学んだのは、盗難対策として位置情報追跡装置を使う際は、犯人にそれを悟られないよう細心の注意が必要だということだ。追跡していることが犯人に知られてしまっては、かえって犯人に利用されてしまう可能性がある。
また、警察の対応の限界も感じさせられた。海外での盗難事件では、警察頼みでは解決が難しいことを痛感した。警察の動きが遅れたことで、犯人に逃げられてしまったのだ。
この一件は、海外旅行における盗難リスクの恐ろしさを如実に示している。個人の対策だけでは防ぎきれない高度な手口も存在するのだ。海外旅行者は、盗難リスクを十分に認識し、万全の対策を取る必要があるだろう。そして、不幸にも盗難被害に遭ってしまった場合は、警察に頼るのはほぼ意味がない。
しかし、この苦い経験にも一つの救いがあった。盗難に遭った翌日に購入した4万円のパソコンのおかげで、ETHGlobal Londonには無事出場することができたのだ。パソコンを盗まれるというアクシデントがなければ、もっと余裕を持って準備ができていたかもしれない。
この経験を教訓に、今後の海外旅行では盗難対策により一層力を入れていきたい。そして、この記事が、海外旅行者の盗難対策の参考となり、同様の被害を防ぐ一助となれば幸いである。
追伸、
ETHGlobal Brusselsには絶対に行きません。