橙書店

koran
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私の住むまちには、橙書店という本屋兼カフェがある。

カフェも本屋も大好きな私は、このまちに引っ越したらきっと大きな鞄を下げて通ってしまうだろうな、と思っていたのだが、本当に足繁く通うようになった。

日常のなかで、本を読める余裕があるときと、そうでないときがあるのだけれど、読みはじめると早いので、読みたい、と思ったそのときに手元に未読の本がほしいタイプだ。

橙書店のラインナップは、この限られた空間によくぞ、という、詩から小説、ルポに写真集まで充実している。

私が好きなのは熊本ゆかりの作家の棚と、ジェンダーについての棚で、熊本ゆかりの作家については、せっかくだから地のものを読みたい、という余所者の私の希望を満たしてくれるし、ジェンダーについての棚は、普段から気になっていた作家の作品が大体揃っているので、とても嬉しい。

また、ときどき店主の田尻久子さんに話しかけることも楽しみだ。

田尻さんは博学で落ち着いた女性で、彼女のことを常連さんたちは皆愛している。故にカウンター席は常に誰かがいて、先にそちらにお客さんが座っていると、ああ今日は田尻さんの席は埋まっているなあと諦めるのだ。

場合によっては相席させていただくこともあるのだけれど、私がそうであるように、カウンターに座る人は田尻さんと話したくて来ているので、なんとなく遠慮してしまう。

ところで、この店には以前看板猫の白玉さんという猫がいたそうだ。

いまでも、白玉さんが使っていたと思われるベッドやおもちゃが自然に置いてあって、白玉さんの存在を感じられる。

私は猫がとても好きなので、ぜひ会いたかったなあと思うし、田尻さんの著作(田尻さんは本も書かれる)に登場する白玉さんの話はお気に入りだ。

きっと橙書店には白玉さんのファンのお客さんも大勢いたんだと思う。

@koran
日常と、大切な物事。