映画化決定の時から気になって観に行こうと思ってた。
が、余裕かましてたら上映終了数日前だったので慌てて駆け込んだ。セーフ!
原作は少し前に読んでたので記憶を蘇らせつつ視聴。自分もPMSにかなり悩まされていて、感情のコントロールができない日が一週間ほど続く。そういう何かしらの「生きづらさ」を抱えている人には他人事じゃないなと共感できるところがたくさんあると思う。シーンの合間合間のちょうどいいタイミングでゆったりとした音楽が流れる。それが気持ちの波をリセットできる感じで結構好きだった。映画を見るとハラハラしたり、感情が(良い意味で)動くので、終始落ち着いて見ることができるのはありがたい。映像も温かみがあってどのシーンもすごく綺麗だった。
男女二人が主演なのに恋愛要素が全くなかったのも安心して見れるところ。お互いのパーソナルなところに入る時も、恋愛的な感情は一切なく純粋に「人助け」として動いている。恋愛に見せないようにする演技は難しそう。
※以下ネタバレ注意
藤沢さんのPMS症状は、感情をぶつけてしまうこと以外は全く同じだった。人の些細な言動が気に障ったり、悪いことがなくてもテンションが低くなってしまう。テンションを上げる元気もない。突き詰めて責め立てたくなる気持ちも、いつもはこんなことでイライラしないのになんで…と自己嫌悪するのも共感。日常生活ではカフェインを避けたりしがち。
みかんを食べながら歩いているシーンが可愛かった。
藤沢さんがイライラのお詫びにお菓子を差し入れするシーンで、「こういうのが習慣になっちゃうと良くないからしなくていいよ、でも私このお菓子好き」と同僚の人が言うシーンが良かった。こういう言い方は誰も傷つけないし素敵だなと思う。栗田科学の社員さんみんな優しくて、他人の深いところに立ち入らない程度の付き合い方がいい。
社長(光石研)がザ・社長という佇まい。光石さんだからこその役どころ。いつもニコニコして周りをよく見ている良い人だが、弟さんを自死で亡くしている。けどそれを感じさせず、山添くん(松村北斗)が事情を知ってもどういう経緯だったのかを特に語らない。山添くんも知ろうとせず物語が進んでいくのが映画らしくなくて良かった。
パニック障害は電車に乗れず、美容院にも行けないということは知識として知っていたが、映像で見ると想像以上に辛そうだった。「みんなができる普通」ができないことに打ちひしがれる場面…駅でしゃがみ込んでしまうシーンが悲しい。山添くんはパニック障害を会社の人に言ってないので、藤沢さんからも最初「とっつきにくくてやる気があるのかよくわかんない」と思われてしまう。実際は発作を起こさないように炭酸水を飲んだり工夫してるだけなのだが。会社の人のお菓子配りやお節介も苦手に感じていた山添くんが、藤沢さんと関わってからたい焼きを差し入れしたり忘れ物を届けに行ったりできることが増えていくのは見てて嬉しい。終盤では積極的に人と関わり仕事ぶりも冒頭と比べて活力がある。自分の価値観も変わって、結果的にパニック障害でできないと諦めてたことも少しずつできるようになっていく良いシーンだった。
山添くんの元上司(渋川清彦)〜!!好き!光石さんとの卓球シーンがいい。
この人もだただの良い人ではなくて悲しみを抱えているけど、その部分を山添くんに重ねて見てるんだと思う。こまめに山添くんを気にかけて、元の会社に戻れるよう動いてくれて、こういう人が周りにいるだけで救われる。
栗田科学の日常を切り取ったような映画だった。最近よく感じているが、傷ついてない人はいない。自分のものさしで人の表面だけ見ることの傲慢さ。気をつけようと思いつつ、出来てるとは言い切れない…
セリフにもあった通り、自分のことはどうにもできないけど、誰かのことは助けられるんだと思えた。ぽかぽかした春みたいな映画。