【映画感想】女王陛下のお気に入り

つぶあん
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中世ヨーロッパ女同士の戦い映画、好きです。

貴族の出自だったアビゲイル(エマ・ストーン)は一家が没落し、従妹のサラ(レイチェル・ワイズ)を頼って宮廷へ仕える。サラはアン女王(オリヴィエ・コールマン)と古くからの友人で心身不安定な女王の代わりに政治を取り仕切っている。アビゲイルは一家の地位と名誉の回復を願う上昇志向人間なので、コネでもなんでも利用して女中から女官に昇格する。が、女王に近い立場のサラのポジションに目をつけサラの立場を奪うような立ち回りをして、女王に気にかけてもらえるように。

序盤はアビゲイルたくましいな〜と思っていたが、だんだん法律スレスレ、いやアウトでは?くらい過激に行動してどんどんのし上がっていく。しまいにはサラに毒を盛り行方不明にさせる。ここまでさせるのは自身の生い立ちや環境が原因だろう。露頭に迷う人生を何よりも恐れ、安定と地位を狙う。

好きなシーン

・舞踏会での女王の表情の変化

楽しい音楽の中、最初は楽しそうな女王だったがサラが男性とダンスしているのを見てどんどんつまらなさそうな表情になっていくのを正面から映していて良い。サラへの当て付けのように、サラが否定的な意見を述べていたハーリーの法案を通してしまう。今でいううつ病のようなものだったのではないか?にしてもこんなメンヘラ政治してたんですか…?

・サラの横領疑惑を女王が完全否定するシーン

ここは二人の長年の関係性がうかがえる。もちろんこれもアビゲイルの策略でおそらく横領はしていない。アビゲイルが女王に進言しても、「彼女はしない」とキッパリ。政治を仕切るときでさえうまく喋れない女王がここでハッキリ言うのはものすごく説得力があった。その後アビゲイルが女王の部屋から退出後、宮廷の廊下を「Fuck!Fuck!(くそっ!)」と言いながら歩くシーンも激しくて好き。

全体的にダークな映像美で、音楽も不穏なbgm。場面の転換でセリフがキャッチアイみたいになっていて、それがシーンに対して示唆的である。

ラストシーンはひたすら虚無。望み通り貴族に復帰して女王のお付きポジションについたアビゲイルの虚しい表情。足を揉ませている女王も同様の顔をしている。二人とも、鬱陶しく思っていたサラの不在を痛感しているようにも見える。

エマ・ストーンはおそらく『ララランド』以来だったがこういうタチの悪い役柄も素敵。オリヴィエ・コールマンの演技がすごく良かった。不安→不機嫌→癇癪までを表情で演技している。アビゲイルとサラが自分に媚びている様を面白がる、という難しそうな感情表現もきちんと伝わっているから役者さんすごい。

過激で意地の悪い人も多く出るからなかなかおすすめしにくいが、メンタルが落ちている時に見るとアビゲイルに元気付けられる。

@koshiannbutter
好きなこと、日々の気づいたこと、感じたこと