ガリレオシリーズの最新作。もう2年前か〜
容疑者Xの献身は原点にして頂点だが、並ぶくらい良かった。
ガリレオシリーズのすごいところは、理系の難しい理論も文学でわかりやすく表現されているところだと思う。
湯川と内海のバディは見ていて安心。内海も男性社会の中で取り仕切っていて『容疑者Xの献身』からの時間の流れを感じて良かった。今回は草薙の過去の事件が絡んでいる。
町のみんなから愛されていた女子高生の佐織が失踪していたが、殺害されていたことが判明。15年前に別件で殺人を犯した蓮沼が今回の事件の容疑者。以前完全黙秘で無罪となったが今回も黙秘を続け、釈放されたのちに誰かに殺害される。
ほぼこいつが犯人だろ！っていう容疑者が死ぬのはミステリーの王道。そこから予想以上にストーリーが繋がっていくのが東野圭吾作品の面白さだ。
〜以下ネタバレ注意〜
事件を追いかける中でどんどん憔悴していく草薙。15年前自分が蓮沼を捕まえていたら佐織は死ななかったと苦しみながら捜査していくが、被害者の父親や町の人間の静かな憎悪に呑み込まれていく。作中被害者遺族の関係者に「あなたたちの苦しみと私たちの苦しみは次元が違う、レベルが違う」と責められるシーン。警察の追い求めるものと被害者側が求めるものは違うと思った。
小さな町だからこそ可能な犯行だった。みんなが日常生活を続けている下で悲しみと怒りを隠している。
ずんの飯尾さんの演技！芸人さんは演技が上手い人が多いが、今回は飛び抜けていた。娘を殺された怒り、悲しみ、やり場のない復讐心が見てて苦しかった。
酒向芳の演技〜〜〜もうMVPすぎる。『検察側の罪人』や『最愛』でもすごかった。怪物的な役が本当に似合う方だ。とある出来事のせいで復讐一本で生きてきて、一番沈黙を守るのが上手かった。ストーリーのどんでん返しにとても貢献している。
新倉の妻が蝶を振り払うシーンが、佐織の蝶の髪飾りになぞらえているような。彼女は実際のところ佐織の才能に嫉妬していたのだろうか。この髪飾りが物語で重要なアイテムになっていて、東野圭吾はどんなものでも取りこぼさないな〜と感心。。
もう湯川先生、刑事になれるって…物理学者と刑事の二足のわらじ、先生なら絶対いけますって。
容疑者、被害者サイドのどちらもが違った形で沈黙を続けている。
エンディングのイントロの悲しさが映画とマッチしていて気持ちよく余韻に浸れた。決してスッキリする結末ではない。特に被害者サイドには全く救いがない。
毎度のことながらタイトルの付け方が秀逸なのが好きなところ。見終えてからタイトルをみると、また違った受け取り方になる。