今日はRe:vale、TRIGGER、IDOLiSH7との合同インタビューだ。参加メンバーについては聞いていなかったが、ŹOOĻからは自分だけだし、他のグループからの参加もおそらくは百、天、陸だろう。相手がどう思っているかは自信がないが、悠的にはŹOOĻのメンバー以外では比較的気が許せるメンバーだ。若干一名を除いては――
そう思いながら悠は指定されていた会議室の扉を開いた悠は、
「おはようございま……」
いつものように挨拶をと思っていた口が最後まで言葉を紡げないまま固まってしまった。
中にいた人間たちが悠の方を見つめている。TRIGGERとIDOLiSH7からの参加メンバーは事前の予想通り天と陸だった。ただRe:valeだけが予想とは違うメンバー。
どこか楽しそうに微笑みながら悠を見つめているのは百ではなくて千だった。
そもそもRe:valeにはセンターというものが存在しない。強いて言えばダブルセンターといったところか。だから各グループのセンターが集められるときは百と千、どちらが呼ばれるかはその時のニーズによる。
最近は百との共演が多かったため、そのことを忘れかけていたが思い返せば千と共演することもあった。
今回はRe:valeからは千が適任だったということだろう。
「悠くん、どうしたの? 入っておいでよ」
陸の無邪気な声にハッと我に返った悠は「うん」と頷きながら扉を閉め、改めて会議室の中を見る。
入口からテーブルを挟んで向こう側には陸と天が座っており、手前側には千が一人。この状況で奥まで行って座るのは不自然だろう。
悠は「失礼します」と声をかけて千の隣の椅子におずおずと座りながら、ちらりと視線を向ければ、
「今日はよろしくね」
千がにっこりと笑いかけてくる。
「よ、よろしくお願いします」
今日のインタビューは別の意味でも緊張しそうな予感がした悠だった。
「悠くん、モモが来ると思ってたみたい」
僕を見た瞬間の彼の表情モモにも見せたかったな、と思い出し笑いをしながら続ける千に、あんまり後輩をいじめちゃ駄目ですぞ、とほんの少しだけ怒った素振りを見せながら淹れたてのコーヒーが入ったマグカップを百が渡してきた。もちろん本気で怒っていないことは分かっているけれど、千はマグカップを受け取りながら、
「そうね。これ以上、怖がられても嫌だし」
次に会った時はもう少し好かれる努力をしてみようかな、と提案してみた。すると今度の百は、むぅと唇を尖らせて、
「好かれるのはほどほどにね。オレ、悠とライバルになるのはヤだよ」
そんな可愛らしい焼きもちをみせてくれる。
「ふふ、結局モモは僕にどうしてほしいの?」
「だ、だから、その……怖がらせない程度に優しく……って、ユキに優しくされたら誰だってユキの事好きになっちゃうよ! あー、でも……」
ぐるぐると悩みだした百に、千はにこにこと機嫌よく笑いながらその顎を掬いくすぐると、百は千にされるがまま、くすぐったそうに目を細めた。
「それにしても随分と悠くんに懐かれたね、モモ」
ひとしきりじゃれ合った後、改めてコーヒーを傾けながらそんなことを口にすれば、
「そうかな?」
まだちょっと警戒されてるっぽい気がするんだけど、とあまりピンときていない様子で両手で持ったマグカップを傾けながら百は言う。
「この前、モモと一緒にゲームセンターに行った時の事、嬉しそうに話してくれたよ」
「あはは、あれは楽しかったな」
男子高校生たちに混じって年甲斐もなくはしゃいじゃった、と笑う百。そんな百の笑顔を見ているうちに、今日は悠だけではなく、天と陸も百と一緒にどこへ行った、何をしたと色々報告してくれたことを思い出す。
陸はよく百と一緒に出掛けた時の事を千に教えてくれていたが、天はいちいち百と一緒に出掛けた時の事を千に報告してくることはないのに今日は随分と饒舌だったように思う。
元々、悠より先に百に懐いていた天だ。もしかしたらほんの少しだけ、百と仲良くなりかけている悠に張り合う気持ちが出てしまったのかもしれない。
天にしては珍しいことだけれども。
それにしても、と千は後輩たちとのことを楽しそうに報告し始めた百を見る。
後輩たちと一緒の時の百はどんな表情をしているのだろう。
自分だけが知っている百の表情と後輩たちだけが知っている百の表情、どちらが多いのか。
思わずそんなことまで考えてしまう。
「ねぇ、モモ」
「ん?」
上目遣いで甘えたようにこちらを見上げてくる百。さすがにこんな表情は後輩たちには見せていないと思いたい。
「モモの方こそ、あんまり後輩くんたちに好かれ過ぎないでね」
僕も後輩くんたちとライバルになるのは嫌だよ、と半分冗談半分本気で言う千に百は目を瞬かせると、
「オレはいつだってダーリン一筋ですぞ」
千の気持ちを知ってか知らずか、弾けるような笑顔で千の腕に抱き着いた。