メアリ・シェリーの自伝と著書をコンパクトに紹介しながら、彼女の思想を明らかにした本。近年、劇的に深まったらしいメアリ・シェリー研究の成果で、しかもコンパクトでわかりやすい。
私にとって彼女は、まず『フランケンシュタイン』の作者で、しかも小学生の頃にたぶんリライトされた子ども向けの本で筋をかろうじて知っているほどで、あとは文学史的な事実「夫パーシー・シェリーの紹介者」が頭のなかに収まっているくらいのひとでしかなかったけれども、やっぱりちゃんと知らないとダメだね。とても興味深い人物だと知ることができた。
パーシーとの結婚生活のなかで書かれた『フランケンシュタイン』は、彼女の伝記的事実(父や母との関係、パーシーとの逃避行生活)などを知ったうえで読むと、その複層的な物語の構造には気がつかないだろう。ちゃんと翻訳を読み直してみたいと思う(この本の第三章は『フランケンシュタイン』分析にあてられていて、すばらしい論考になっている)。
同時代の批評家たち(男性知識人たち)からことごとく作品を誤読され続け、というか彼女の小説に示されている政治的ラディカルさ/フェミニズムに気がつかなかったというのは、それこそ(雑な表現になるけれど)ヴィクトリア朝当時の男性たちの「集合的無意識」のなせるワザだったのではないかとか、この本を読んでから思う。彼らは「メアリの主張に気づかないこと」を選択したのではなかろうか。気づかないでいれば、彼らもメアリの眼差しから逃れられるというわけだ。
それにしても、メアリ・シェリーの『ヴァルパーガ』は読んでみたい。まだ誰も翻訳していないようだけど。