何重にも張り巡らされているはずの制度やセーフティネットの「隙間」からこぼれ落ちて救済の手の届かぬ暗いどこかで繰り返される悲劇や悲惨。それをどう掬い上げ/救い上げていくか。フィールドワークから丹念に拾った当事者たちの声から解決のヒントを探す本。
実際、この本で明確な答えが示されるわけではないし、必ずしもここに召喚されている思想家たちの(ウィリアム・ジェイムズ、ティム・インゴルド、デュルケーム、メルロ=ポンティ、アガンベン、ヌスバウム、レヴィナス、ベルクソン、ときに宮地尚子さえ)言説すら、この現実の前に上滑りしてしまっている雰囲気はどうしてもある(ここにいま書きつけているわたしの言葉と同程度に)。
この本には大阪のおばちゃんたちの事例があるけれども、結局のところ、地道な人脈づくりと「ちょっとした個人的おせっかい」を契機に、こぼれ落ちそうなひとを制度へつなげるほかない。問題は、その「おせっかい」が焼きにくい空気がいつからか社会に瀰漫していることで、その雰囲気を分析/解体することのほうが急務であるような気がする。(その点では、大阪はまだしも文化的に救われているところが大きいかもしれない。)