1.
2020年秋頃に就労移行支援事業所に通所を始めてから4年目になる。20代が多い今の訓練生の中で30代後半の私は年齢的にも在籍年数的にも年寄りなので、最近は冗談半分・自嘲半分で「年寄りです」とおどけて言っている。
就労移行支援事業所を勧めてくれたのはサポステの担当の職員さんと、今もお世話になっている若年者向けハローワークの臨床心理士さんだった。サポステで一般企業への就労体験をさせてもらったものの、職種その他で自分には合わず挫折し、それを引きずっていたところだった。
(実は今の事業所には2回見学や体験に行っているのだが、1回目は「なんか怖い、やっぱり無理だ」という一般社会への恐怖と不信が勝ってしまい、一度断念している)
2.
事業所には、最初は自立訓練(生活訓練)から週2〜3日・午前中だけ、というペースで通所を始めた。希望する人にはリモート(在宅)訓練という選択もあるのだが、決まった時間に起きて電車に乗り通所する・外に出る、自宅ではない場所で何時間か過ごす、ということがリハビリになると思い、私はあえて直接通所することを選んだ。
ペースや訓練時間を段々と増やし、就労移行2年目(在籍4年目)になった今は、平日は毎日朝から夕方まで訓練に参加し、休んでも月一日くらいの皆勤賞?になっている(習慣+惰性もあるのだが)。
3.
私は基礎の訓練(PC操作)は終わっているので、現在は就活をしながらWEBや資格の勉強だの、事務的な訓練(練習兼事業所の支援員さんの雑務補助的なもの)だのを事業所余生として行っている。
掲示物作りなどはある程度お任せしてもらえるし(センスは必要だが)、たまに入る臨時のグループ作業や講座も、忙しいなりにこれはこれで楽しんでいる。
感情などを言語化して他者に伝える(ex.体調が悪いので休ませて欲しい)・上手に休むことについては今でも下手くそだが、3年以上も居座っていると色々分かってきて、定型作業であれば「これはどうしますか?ではあちらはどうされますか?」と支援員さんの指示をなんとか先回り / 今後の予定を予測して行動することができるようになったし、グループ作業をする際は「どうしたら良い意味でメンバーに動いてもらえるかな」などと考える余裕も多少できてきた。これは通所開始当初よりはだいぶ進歩している点ではないかな、と思う。
4.
就労移行支援事業所に通所を始めたばかり、あるいはこれから始めるという人に伝えたいのは、
自分に合った事業所を見つける
小さなことでも大丈夫なので、支援員さんに積極的に報連相して関係を築く
事業所は擬似的な職場だが、訓練生の誰もが練習をする場所 / 失敗してよい場所であると認識する
他の訓練生や卒業生と関わる機会があれば、積極的に関わってみる
といったことだ。
自分に合った居場所 = 良い依存先を作ることはなかなか難しいのだが、社会で挫折した人間にとっては居場所があることで「自分は社会の一員であり、ここではひとりではない」という安心感が得られる。また、支援員さんは福祉(対人援助)のプロなので、きちんと関係を築いておけば、訓練から自分の心身 / 生活に関することまで相談をしやすいし、長い目で見てもらうことで、就活などの困難に陥った時もフィードバックを得られる。
そしてスモールステップで訓練をする・色々な性質や特性を持つ他の訓練生や卒業生と関わることで、失った自己効力感などを少しずつ回復していくことができる、と私は感じている。
「誰もが練習をする場所 / 失敗してよい場所であると認識する」という項目を入れたのは、年齢・性別・経歴・スキル・障害特性・通所を始めた時期etc.が訓練生は皆異なることも、事業所で過ごす上では大事なこととして頭に入れておいて欲しいからだ。
他の訓練生の言動に「なぜ?」と思い腹が立つこともあるかもしれないが、入ったばかりで事業所内のルールや空気が分からないだけかもしれないし、社会人経験が不足しているだけかもしれないし、発達障害などの見えにくい障害特性でそのような言動をしているだけかもしれない、と考えるとしっくりくるかもしれない(事業所のルールから外れる言動があれば、本人に優しくそっと教えてあげるか、言いにくければ波風立てず支援員さんに相談はして欲しい)。
もちろん、逆に自分がフォローをされる / 失敗してしまう側になることもあると思うが、人に危害を加える・故意にルールを破るといったことでなければ、冷静に指導・指摘・面談等でのフィードバックはされどパワハラレベルで怒られる訳ではない(と思う)ので、「失敗しても、訓練生や人間として終わりではない」ことも、前述の理由同様に大事なこととして頭には入れておいて欲しい。
【※ちなみに、福祉サービスの苦情解決窓口の第三者機関としては「運営適正化委員会」というものがあり、事業所から適切なサービスなどを受けられない・個人情報などが適切に扱われていないetc.といった利用者と事業所間のトラブルを相談することができる。また、「障害者虐待防止法」には心理的虐待も含まれており、虐待の発見やそれらの相談を受けた者は市町村に通報しなければならない、と定められている】
5.
福祉は支援する側もされる側も綺麗ごとばかりではないし、事業所や就労移行という場所そのものが合わない、という人ももちろんいると思うが、私にとって事業所は今やそれなりの居場所になっている。
仕事とはいえ、たくさんの迷惑をかけても障害者というよりは「ひとりの人間」としてきちんと扱ってくれる・長い目で自分を見ていてくれる支援員さん達には本当に感謝している(なんなら法人本部に大金を寄付し骨を埋めてよいくらいなのだが、金持ちではないし、骨を埋めるのはさすがに迷惑なのでやめておく、冗談である)。
就労移行支援事業所に在籍している間は、大きな壁にぶつかることが度々あると思う。だけれど、それは後々に生きると思うし、2年間(4年間)を“社会復帰の練習や新しいことへの挑戦”をする貴重な場としても、“居場所”としても活かしていって欲しいと、3年以上を過ごした現役の訓練生として思う。