先月新婚旅行でスペインに行ってきた
スペインに行ってきたというと「サクラダファミリアどうだった?」と聞かれることが多いのだが、残念ながら私はバルセロナには行かなかった
日程的には十分行くことも可能だったが、今回私たちはスペインのアンダルシア地方を回ることにしたからだ
アンダルシアというのはスペインの南で地図的にはスペインの最南端に位置する
ジブラルタル海峡からは天気がいい日はアフリカ大陸が望めるといい、5月ではあるがそこはまさに情熱の国スペインにふさわしい熱気に包まれていた
アンダルシアで有名な都市でいうと、マラガやセビーリャ、コルドバなどが挙げられるだろう
しかしなんといっても観光名所として最も有名なのはグラナダにあるアルハンブラ宮殿だろう
アルハンブラ宮殿はかつてグラナダに存在したイスラム系の王朝(ナスル朝)によって建てられた宮殿で、キリスト教勢力によるレコンキスタ(国土回復運動)の中でも最後まで生き残った、まさにスペインのイスラム文化を象徴する存在だ
グラナダがキリスト教勢力によって陥落したのは西暦1500年前後のことであり、それから500年が経つ今となってはもはや当時の部屋や建物はほとんど残っておらず、修復された姿から当時の様子を想像するしかない
それでも実際に行ってみれば、このアンダルシア地方において数百年にわたって栄華を極めたアラブの王たちの面影を様々な遺跡の中に見ることができる
東アジアの島国生まれの私としては、遠く離れたイベリア半島で行われたキリスト教とイスラム教の争いと言われてもいまいちピンと来なかったのだが、アルハンブラ宮殿に来てみて、もう一段階抽象化して考えると、これは平家物語に通じるところがあるのではないかと思うようになった
ご存知の通り平安時代末期、平家と源氏の間で繰り広げられた戦いは、敗者と勝者が目まぐるしく入れ替わりながら、最終的に源頼朝による鎌倉幕府の幕開けに繋がっていく
平家物語で有名なフレーズに「盛者必衰」という言葉があるが、イベリア半島におけるアラブの王たちの栄華もまさにそれだったのではないか
アルハンブラ宮殿をはじめ、アンダルシア各地にあったイスラム系勢力の跡地を訪れてみて、私にはどうにも平清盛とアラブの王たちが重なって仕方なかった
帰り際、この本を読みながら帰路についた
この本にはアルハンブラ宮殿を中心として、現在のスペイン王国に至るまでの歴史とそれにまつわる様々なエピソードが収められている
その中でも印象的なフレーズを一つ
大抵の人はスペインと言えば、官能的な印象を放つ自由で華やかなイタリアを思い起こして、人を愉楽の園へと誘う長閑な風景が広がる魅力的な南の国だと思いがちであろう。ところが、実際はその真逆だ。なるほど、沿海地域では多少の例外はあるものの、だいたいはどこか重苦しさを感じさせる、メランコリックな風情を醸す国である。
今回の旅行で私はスペインという国を纏っている一種の寂寥感のようなものを感じ取ることができたように思う。スペイン人の陽気な人当たりというのは案外この寂寥感が起源となっているかもしれないと勝手に想像してみたりしている。