昨晩、吉川英治の『私本太平記』を完読した
僕は吉川英治の本が大好きで平家物語と太閤記、そして三国志を読んだことがある
どれも長編で毎回完読するのに苦労するのだが、読後の充実感とその時代の空気感を知れるのが楽しくて癖になっている
さて本作であるが、作者自身があとがきで述べている通り、太平記という物語の性質上、物語としての面白さは平家物語には劣ると思う
室町時代は日本史の中でも特に存在感が薄い時代で、何が起こったのかと言われてもパッと答えることができない人が多いのではないだろうか
足利尊氏や後醍醐天皇という言葉は聞いたことがあっても、あまりにも権力の移り変わりが早すぎて、なかなか説明が難しい
最終的に権力を手にしたのは足利尊氏だが、尊氏にしても鎌倉幕府を滅ぼしてからそのまま順風満帆にきたのではなく、一時期は新田義貞をはじめとする後醍醐天皇陣営に追われて九州まで追い詰められるという波乱万丈な生涯である
その新田義貞もかつては尊氏と共に北条氏と戦った仲間であり、さらにいえば九州まで追い詰められたときに仲間だった弟の足利義直は室町幕府成立後に尊氏によって毒殺されてしまう
現代社会もさまざまな問題を抱えているが、朝廷が分裂していたこの時代に比べればまだマシなのかもしれない、と思えるほど酷い時代であった
平家物語どころではない諸行無常を感じられるという意味ではおすすめだが、あまりにも生々しいので、そういうあたりが室町時代がいまいち人気がない理由なのかなぁと思っている