読んだ資料:製造業を巡る現状と課題 今後の政策の方向性(2024年5月)

Negi-Char siu KISHIDA
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公開:2024/5/30

この会議の資料 4 が、製造業を巡る現状と課題 今後の政策の方向性 [2024年5月](PDF形式:9,001KB)。時折、X (Twitter) で画像を使って投稿しているアカウントを見かけたので、通しで読んだ。

読んでみて分かったのは、この資料を単体でみてもあまり深い意味は無いかもしれない、ということ。何故なら、これはこの分科会の資料の一つであり、問題は「これらの資料を基に、分科会ではどういう議論がされたのか」の方が重要だから。そういう意味では、料3 御議論いただきたい論点(PDF形式:782KB) 、議事の動画は結構重要な気がする。

そのようなわけで、直近2回(第14回第15回)の同分科会で、何が話し合われていたかを、配布資料並びに議事録から追った。特に、同タイトルの資料は、第14回 2023年5月 にも登場している。

製造DX

第14回分科会の時点で、製造業 DX の必要性と政策方向性の話がされている(第16回資料の p.32, p.33 に書かれている通り)。ここでは、内製化の重要性を説いていて、システム開発におけるユーザーのスペックを社内で持つ重要性の話と、ソフトウェア系の技術者が社内で働きやすい環境の整備の必要性の話が挙がっている(ここで書かれている内容って、どれだけ実現しているのかなと思っている)。

また、「IT専門家に仕事を丸投げするのではなく、現場の知識を持った人がIT教育を受け、自分たちで課題解決に取り組むことが重要」(第14回分科会議事要旨)という内容が述べられている一方で、この「現場」については、第16回分科会資料4 p.29 に「これまで現場の強みを武器としてきたが、戦略的束ね無きバラバラ感が各地でのゲリラ戦につながっている」とも書かれていて、これが「DXが行われると、課題解決に寄与しない、既存の業務・部門の範囲の業務の最適化(=部分最適)となるケースが大半」(p.34) になっている原因でもあるように、見受けられる。


資料 p.42 に「DX 推進人材の確保・育成」って書いてあるけれど、製造業が求める DX 推進人材って何なのだろうか。誰が求めているのか、何を求めているのか(期待しているのか)。実は、あんまり求められていないのかも。

-(2024/5/31追記)-

デジタル推進人材育成プログラム「マナビDX Quest」によって、DX 推進人材を育成しようとしていることがわかった。毎年 6 月に募集が始まるようだ。

全く別の観点から。資料4 内に書かれている「各部門が一丸となった」とかいう言葉が、私はちょっと苦手だ。この辺に、何かこう、根性論を感じるというか。それほどみんな、職場での仕事にかつての時代ほど思い入れも無くて、一丸になりたいと積極的に思ってない人がいるかもしれない。

もちろん、そういうのが好きだ、っていう人がいることも知っているし、その人のことを悪く言うつもりは全然無い。一方で、苦手な人・好きでない人もいるんだろうな、という想像はしておきたいところ。

Hard-to-abate産業におけるGXの方向性

この GX が、Green Transformation という言葉を示すことを、初めて知った。この話は 2022 年から続いている審議内容で、第 15 回分科会ではセメント・自動車・航空機など各分野への投資支援の説明が書かれていた内容が、具体的に進みつつあることを示している。

一方で、消費者がグリーンプロダクトを積極的に選択しない場合、投資は回収できず、GXは実現されない点について、触れている。

経済安全保障を巡る国際情勢と政策の方向性

第15回分科会の中では、「『経済安全保障』というよりも『安全保障』そのものの中に経済が含まれている」という意見が出ていた。それを踏まえた戦略的対話に関するこれまでの実績について、資料に載っている。セキュリティ・クリアランス制度の創設に関係する説明が掲載されている (p.87, 88) のは、その流れによる。

このセクションで強く説明したいのは、技術管理強化のための官民対話スキームの構築 (p.89) から、今後の政策方針 (p.91) のところ。ここって、どうやって進めていくのだろう。対話の重要性がどちらにあるのかによって、問題意識がだいぶ違う気がする。

航空機産業戦略

第15回分科会では、GX の切り口で説明されていた。ここでは、航空機産業の成長予測・全体像・完成機プロジェクトの中止に触れた後、AAM (Advanced Air Mobility) 市場に触れて、現状の「海外 OEM を待つ姿勢から脱却」していくことの必要性を述べている。完成機創出ロードマップを捨てているわけではない (p.110) ので、この辺りが今後どうなるのか、見ていきたいところ。

宇宙産業政策

p.116 に書かれている「民間宇宙ビジネスの拡大」をみると、2040年までに 140兆円規模になる予測があるらしい。2025e から大きく伸びるのは、Second Order Impacts (二次的影響)とあるから、宇宙ビジネスをきっかけに伸びていくものを示している。インターネット関係か。

p.123, 124 の資料を見ると、Starlink と OneWeb が、小型・超小型衛星コンステレーションに相当する衛星の小型化・打上機数の急増を牽引しているのが、はっきりわかる。中国がかなりの数、ミサイルを打ち上げている推移がよく分かるけれど、それとほぼ同数を SpaceX が打ち上げているのも、驚いた。

p.137 「宇宙戦略基金の創設」で総額 3,000億円用意して、そのうち、商業衛星コンステレーション構築加速化に 950億円を充てるといっているので、衛星コンステレーションビジネスが加速することを期待している。


Starlink Standard Actuated Kit は、au で分割で買えるので手が届きやすくなった(私の手にはめちゃくちゃ遠いが)。災害時の利用にかなり役立つこともよく分かる。けれども、災害時に利用できる通信網を、Starlink の寡占状態に乗っかってしまうのも、結構危険な気がしていた。そういった意味では、自国内で衛星コンステレーションビジネスが伸びるのは、少し良い方向性かもしれない。


などと、資料を読みながら考えた。議論そのものを YouTube 動画で追おうとすると約 2 時間かかるので、今日は止めよう。

@ksdshu11
今日を楽しく生きるだけ。書いたことは、全てポエムです。