冬が来ました。完膚なきまでに冬です。外は白く染まり風は吹き荒れ足下はおぼつかなくなる。鼻から息を吸えば痛みが走り、眼鏡は曇って自分の息で凍って前がなにも見えなくなる。そう、冬です。
雪国の人には伝わるかと思いますが、冬って時間がなくなりますよね。雪のやつらは時間もタイミングも読まずにどこどこと降って、朝起きたら車の姿が見えない。なんていうのもあるあるです。スノーブラシの柄がすっぽり雪の中に埋まるほど降った日の絶望感と言ったら。しかし雪国、雪が降るの当たり前すぎて冬だからといってお仕事のタイミングが遅くなることもないのです。不要不急の外出を控えてとどれだけテレビが言っても、基本的には出勤しなければならないわけで。しかし積もっている雪を適切に除けなければ家からの脱出も出来ないのです。つまり早起きをして雪かきをしなければならないのである。つらい。寒い日の真っ暗な朝に真っ白で誰にも踏みしめられていない新雪が膝上くらいにあるの、つらい。しかもその量は固定制ではなく、一時間ほど雪かきをして振り返るとまた同じだけ降っている。なんていうのも珍しくありません。ある種の拷問である。ワンシーズンに一度は腰の高さくらいの雪が積もったりもするしなあ。
家を出るまでに雪が降らずとも、仕事やなにかで不在している間にめちゃくちゃ雪が積もることもあります。そうするとやはり雪かきをせねばなりません。だって家が埋もれてしまうから。一日が雪かきに占有されるなんてことも珍しくありません。毎年毎年いい加減にしてくれと思いながら、決して安くはないママさんダンプを買い、スコップを買う。なぜならそこに雪があるから。雪かきをしなければ生きてはいけないので。外出のときも、地面が露出している季節のようにすんなりと移動が出来ないため、早めに家を出なければならず、早く出たからといって早くつく保証もない。そのため早めの行動が冬以外の季節よりも必要になるのです。
つまり冬は時間が減ってしまうというわけです。暴論だという自覚はある。せめて誰も足を踏み入れない山奥でどかどかと降り、スキー場ではそこそこの量を降らせ、人間の生活圏では毎日一センチくらいで許して欲しい。そんなことを願ってしまう日々がこれからはじまるのです。
春、来ないかなあ。