とある小さな町にあった幻の蕎麦。

北海道の真ん中北側。稚内からどんどこ南下した場所に音威子府という小さな村があります。おといねっぷ。と、読みます。

そこにはかつて真っ黒いお蕎麦がありまして、道の駅などで紙で巻かれた棒状のお蕎麦が二人前400gがたしか400円ほどで購入出来たり、道の駅内の食堂や村の駅や食堂でも食べられたりしておりました。後に駅そばは閉店となり、音威子府蕎麦そのものも製造を終了したのが二年か三年ほど前のことです。ぐぐると多分いろんな方が撮ったものがあると思う。一般的なお蕎麦よりはちょっと太めで黒く独特の強い風味がある美味しいお蕎麦でした。出汁が強めで甘いおつゆと合うと個人的には思っています。わたしと家族はこれが大好きで、それなりに長い時間をかけては多めに買いに行き、家で冷凍保存しながら大事に大事に食べていました。

ある年、その蕎麦が販売終了するとはしらないまま道の駅を巡るついでに買いにいくと、道の駅前面のガラスに「完売」と貼ってあったのです。そのとき初めて販売終了をしりました。製造している会社の社長さんだったかが高齢のため、自分が退いた後でお金もうけのために価格がつり上げられたり、味を落とされることを懸念したかららしいとなにかの記事でみかけました。なるほどそれは仕方がない。残念だけれど気持ちもわかる。わかるけれどもまだ音威子府そばを食べたい我々は、後日お店開店に滑り込める時間に家を出て再チャレンジをしました。再放送かってくらい目的のあるお出かけはそんな感じで早朝出発が多いのです。

店舗側でもまとめ買いして冷凍保存して食べてねと案内していたので、自宅で保存できるギリギリを攻めて買わせていただきました。いままで本当にありがとう。もっと早く出会っていたかった。

そんなわけで、今現在自宅の冷凍庫にまとめ買いしたものが冷凍庫に保管されているのですが、もったいなくて食べられないんですよね。いくつかは食べて残りがふたつ。これを食べるともう食べられない。悩ましい。ちなみに温かくても冷たくても美味しいです。無限に食べられてしまう。

今年の春先音威子府近くのとある町の道の駅で音威子府そばの文字を見かけまして、以前のものと違うパッケージとちょっとお高い価格で売られていたので買ったのですね。見た目と茹でたときにゆで汁に黒い色が移るのも、においも、そっくりなお蕎麦でした。でもやはり違うんですよね。わたしの茹で方のせいかもしれないけれど元祖音威子府そばはモチモチしていなかったのですが、そちらで購入したものは弾力が強めな印象。似ているけれどちょっと違う。ちなみにスーパーにも同名のお蕎麦はみかけるんですけど、あれは完全に別の名前がついたお蕎麦として食べるものでした。残念。

他にも旭川市内にも音威子府そばを取り扱っているお蕎麦屋さんが出来たらしくて、場所もわかるし行けるけれど足が伸びないのは、やはりこれではないなと思ったときに永劫食べられない味があることを実感したくないからかもしれないなあと。そんな風に思いを馳せつつ、いまだ自宅にて保存しているものは食べられず、冷凍庫には元祖音威子府そばが鎮座しているのでした。

@ktgn_ds
意味はないけれど個人的に楽しかったり美味しかったり気になったことを書いたりしたいものです。