素晴らしいひとりの休日

加藤み子
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 たまには日記らしい記事を書いてみる。

 労働者の中には付与された休暇の日数がたんまりあるのに休まない、休もうとすらしない人が結構いる。私は持てる権利はすべて行使しようとするので、有給があるだけ休むし生理休暇も使うし在宅勤務制度もフレックス制も全部利用する。今日は振替休日。遅めに起床して、朝日に当たりながらベッドの中で少し本を読む。ゆざきさかおみ『作りたい女と食べたい女』の5巻の発売日なので、これも購入してKindleで読んだ。そのうち紙で全巻揃えたい。

 そうしているうちにお腹が空いてきて、コーヒーが飲みたい気分になる。自宅から一番近いカフェといえばスターバックスだが、ガザ・パレスチナ虐殺反対のため不買しているので当然行くつもりもなく、タリーズやドトールは好きだが近い店舗はアクセスしづらいので、フレンチトーストも食べたかったし星乃珈琲店に行った。平日の昼前だったが混んでいた。隣の大学生風の若者は勉強していて、フレンチトーストが運ばれてくるまでの時間に私も本を開き、九段理江『東京都同情塔』を読み始める。

星乃珈琲店のテーブルの上に、開かれた九段理江『東京都同情塔』の単行本とコーヒーが置いてある風景の写真

 朝食兼昼食。学生の頃はカフェで勉強をしていたこともあったが、最近は飲食店で落ち着くことができなくなってきていて、今回もフレンチトーストとコーヒーを平らげたらすぐに席を立った。そのまま図書館へ向かい、本を返却してからいつものようにブラブラと棚を見る。途中、吸い寄せられるように哲学に関する書籍が並んでいる場所へ行き、中島義道『時間と死』ほか何冊か借りる。借りる予定はなかったが「ん? これを読む時間はあるのか?」と思ったときにはすでに貸出機の前にいた。

 その足で本屋に行こうかと思い立ったが、節約のために我慢した。なぜなら今月は車検があるからだ(正しくは、車検があると思っていたから、だ。帰宅してから車検車検と思いながら車検証の有効期限を確認したら、一年後の今月だった。ただそれに気付くのはここから数時間後の話)。駅前に用事があったのでちゃちゃっと済ませると、立憲民主党が演説をしていたので立ち止まって聞いた。野党第一党としてもっと頑張ってほしい。

 帰宅して、車検証の確認(前述)を終えてから、なるべく外出したままの体で家の中にいたくない性格なので、早めの時間だったがシャワーを浴びた。明るいうちに風呂に入るのは大好きだ。湯を張って、パックをしながら『ハズビンホテルへようこそ』を見つつ一時間ほどゆっくりする。上がるとすっかり夕方だった。軽く家の掃除をしてから、夫の帰宅に合わせて夕食を取った。

 ところで、今朝は久しぶりに夢を見た。下の弟と母が出てきた。下の弟はとても楽しそうで本当に良かった。きっと現実世界でも元気なのだろう。母は、私は夢の中の母にはいつも何かを訴えていたり説得していたりするばかりで、夢の中の母はいつも頑固に家父長制の渦中から動こうとしないのだが、今日の母はとても優しかったように覚えている。暖かくて、多分どこか柔らかい場所で一緒に横になっていて、目が覚めた直後は「なんで母がいないのだろう」と考えていた。やがて意識が鮮明になっていく。そうだここは実家じゃない。母とは5年くらい会っていないし今後会うこともない。

 本やインターネットに私個人の事情や症状が書かれているはずはない。客観的な診断がされたくて、精神科や心療内科に通うことを視野に入れている。もう何年も。腰が重いのは仕方ないと思いながらも、でも実際に予約も埋まっていて取りにくいし、勇気を出して行ってみたカウンセリングでは心がズタボロになるし、という言い訳を並べている。誰か詳しい人に相談したい、しかし人を知らない、それに別に生活に支障をきたしているほどではないしこのままでもいいのではないかと諦観している面すらある。『作りたい女と食べたい女』の登場人物のような友人が身近にいたらさぞ幸せだろう。クィアで、政治や本の話ができて、ヘンテコなうっかりも笑ってくれて、どんな症状や過去だろうとお互いにケアし合えるような、そんな友人。ひとりでいることが大好きなことと、この孤独は両立する。人間。

 政治には関与せず、私生活の中で閉じて生きていこうとする人々は、公的なサービスに期待せず自助努力だけでやっていこうとする傾向が強い。このことは、彼らの公助に対する支持が弱いことを意味しており、「政治と関わりたくない人たち」が増えることで、ますます自助、自己責任が強調される社会になる可能性を示唆している。――「政治と関わりたくない人たち」がもたらす政治的帰結(Newsweek)

 今夜のBGMはこれ。 L.V.Beethoven : Piano Sonata No.14 in C# minor Op.27 No.2 "Moonlight" (Mukawa Keigo) │ 오르페오 채널