1月の終わり

加藤み子
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 シュトレンが食べたいとぼうっと思っているうちにクリスマス期間が始まって終わっていた。定期的に通っている婦人科で採血をしたらうまく刺さらなくて三回やり直された。会議で久しぶりにハイヒールを履いたら負傷してもう絶対に履くもんかと決意した。日曜日の二時くらいに昼寝をするのが楽しい。毎日戦っているうちにこうやって時間は過ぎていく。

 信頼筋がおすすめしていたので私も大流行中の「ハズビンホテルへようこそ」を見た。まんまと激ハマりしてここ数週間の他の記憶がない(ある)。作中歌をずっと聞いている。

 この物語の評価されるべき素晴らしいところはたくさんの人が書いているので省くけれども、私としては一番好きなキャラ・アラスターが「運悪く血の繋がった親がクソなときは自分で家族を選べばいい」と言ってくれただけでもう良い…。こんなハチャメチャな世界観で、でもこんなにも優しい、すっごくクィアで登場人物も音楽も魅力的で、でも醜く理不尽な現実社会を写し出す鏡のようで、でも「そんなの絶対にフェアじゃない」と一緒に怒ってくれる、「負け犬でもなんでも自分はありのままでいいんだ」と慰めてくれる、悪魔が「セックスしませんか」と性的同意を得ようとする、バウンダリーを学ぼうとする、権力や不当と戦って人の善を信じてみようとする、そんなミュージカルアニメ。

 ※視聴ぜひおすすめですが、暴力表現が非常にリアルに描かれているのでフラッシュバックなど気をつけてください。エンジェルとヴァルの関係は本当にしんどくて私もあまり見られません。

 虐殺は止められないし、裏金問題でも与党は逮捕されないし、歴史は改変されるし、性暴力は正当化されるし、憲法は改正されようとしている。共同親権反対の集まりには震えて出て行けないからオンラインだけで抵抗している。毎日戦っているうちにこうやって時間は過ぎていく。1月の終わり。