98 眠れん

月曜日に日記に書くようなことなんて何もないように思える。二週間後に引っ越す部屋はソファもデスクもなくて何かを忘却するためのように無理やり模様替えをしたのが影響したのか昨晩は二時になっても眠れなかった。スワイプした瞬間に忘れるYouTubeのショート動画は一時やっていたTinderみたいだった。昔は「消費される」という言葉は悪い響きを持っていたように記憶しているが、今はその価値が逆転したのかもしれない。わたしはたった一瞬でも火傷をする程の熱を発せればその役目を終える使い捨てのカイロみたいな快楽を求め、インターネットを彷徨う亡霊のように無心で毎晩スクロールを繰り返す。結局眠れたのは何時だっただろう。八時には起きてゴミを捨てにアパートの外に降りて（今日は燃えるゴミの日ではなかった）一通りの支度を終えた後にまだ時間があったから煙草を二本吸っていつもは食べない朝食を食べた。胃がムカムカして食べなければよかったと思った。駅構内のコンビニでワンピースの新刊を買った。乗り過ごしそうになるくらいには夢中で読んだ。久しぶりに定時で上がって、今二本目の缶酎ハイを飲みながらこの日記を書いている。そういえば今日仕事中に路地裏を歩いていたら前方を小学一年生と思しき子が歩いていて、チラチラとこちらを振り返るから怪しいものではないことを示すために歩く速度を緩めた。するとその子はペコリとお辞儀をした。なぜか慌てたわたしも同じようにお辞儀をした。その行動で思考が止まってしまったのか、その子は私の行く手を阻むような形で立ち止まってしまった。わたしも釣られて立ち止まる。首を右に傾げたら同じようにその子も首を傾げる。左に傾げたらどうなるやろと思って左に傾げたらその子は前を向いて行ってしまった。ペンギンみたいな子だった。今日は何時に眠れるのだろう。なるべく早めに眠りに就きたいと毎晩思っている。2024.3.4