74 猫背の地軸・投薬と花束

鯨日記
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納豆が好きだ。納豆が好きでよく食べる。いつも3パックのものを2個まとめて買う。今日も洗練されたスーパーに行って納豆を無造作に2つ掴みカゴに放り込む。そのまま立ち去ろうとした時「『食品ロス』をなくそう」というポップが目に入る。カゴの中の納豆に印字された賞味期限を見ると2/17で、手前に陳列されていた納豆は2/12となっていた。わたしは無意識下のうちに賞味期限が長いものを選び取っていたのだと気づいた。キムチコーナーでいつものキムチをピック・アップする。精肉コーナーのひき肉の鮮度を確かめる。でも気がついたら足は納豆売り場に戻ってきている。カゴの中にあった納豆を戻し、2/12の納豆を手に取り入れる。地球はおれを地軸にして自転をはじめ、持続可能な社会はおれの手により保たれた。そう考えると気分が良かったけれど、おれは猫背だから地球が23.5°以上傾いてしまいでたらめな季節になってしまう。でたらめな季節になれば持続可能もSDGsもない◆職場の先輩にホット・コーヒーとクッキーをご馳走になる。わたしはかわいいからみんなわたしによくお菓子をくれる。机上にあるカンガルーのぬいぐるみのポケットに時々飴やキット・カットやカントリーマウムが入っていて嬉しい。カンガルー日和。歩道橋の上を歩く園児と思しき集団たちから「お~~~~い!!!!」と言われて手を振り返す。昨日処方された薬を飲む。強烈な眠気と無気力感がわたしを襲う。すべてが平坦に見える。頭から情報がひとつずつ抜けていくけれど、記憶の扉の閉め方も場所もわからない感じ。わたしを保ってくれていた嗜好品は医者に禁止だと言われた。医者の言いつけを破ることほどダサいこともないと思っているから律儀に守っていると楽しいことなんてなーんにもないような気がしてくる。酒も煙草もねえ てめえの足で一歩一歩、現実を前に進んで行くしかねえんだよな(ナコン)◆前に車の上で見た黒猫がまた違う車の上に乗っていた。かわいいねと口の形だけで伝えるけれど、マスクをしていたからきっとわかんなかったよね。外れた自転車の部品。ハイレモンの抜け殻のアルミホイル。静かな美術館。磨き上げられたフローリング。ヒラギノUD角ゴStdN W3、Avenir Next Rのユニバーサル・デザイン・フォントの解説パネル。絞られた照明。学芸員が座るためのスツール。歩道橋の上の園児の声。幼少期に暮らしていた街。ニュータウンの喧騒。三月末にまとまった休みがほしくて、わたしは湯治に行くと決めている。湯治という言葉を最近まで知らなかった。温泉に入ることを通じて、病気の治療や心身の回復を図ること。知らない街の温泉に浸かって、知らない宿に泊まる。一人旅はわたしにとって花束みたいなもので、いわば与えられたギフトだった。わたしの身体を持続可能にするため、日々投薬と花束を。 2024/2/8

参考文献:「東京国立博物館 1089ブログ」https://www.tnm.jp/modules/rblog/index.php/1/2019/12/11/%E6%9C%AC%E9%A4%A8%E8%A7%A3%E8%AA%AC%E3%83%AA%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%A2%E3%83%AB/

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